「タイタニック」25年後の今でも全然色褪せない訳 ジャック? ローズ? 本当の主人公は誰なのか

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その存在を誰にも証明できない、幻でもあったかのようなジャックとの出会いによってローズは変わった。強く自分らしく生きる自分を手に入れたのだ。そうやって、満足いく人生を生きた彼女は、自分の人生をどう幕引きするか考え続けていたのではないか。

そこに舞い込んだロベットとの出会い。彼女は長年隠し持ち続けていた「碧洋のハート(ブルーダイヤモンド)」を、ジャックとの思い出が詰まったあるべき場所に戻し、眠りについた。

物語のラストでローズが死んだとは明らかにされてはいないが、あれは彼女の夢ではなく、あの世でジャックと再会したと私は考えている。その証拠に、ジャックは死ぬ前に力を振り絞ってローズをこう励ました。

「無事に助かって、たくさんの子どもを産むんだ。彼らを育てて、歳をとって、温かいベッドで死ぬんだ」

その言葉どおり、ローズはやり残していたことを無事に果たし、安らかな眠りについた。そして、あの感動的なエンディングでの再会につながるのである。

ローズにとっては、乗り込んだ時は奴隷船のようだったタイタニック号が、鮮やかに復活していったあのシーンは何度見ても涙があふれる。

かつて待ち合わせた時計台の前、指し示している時間はタイタニック号が沈没した2時20分。そして周りにいるのは共に生き、沈没で亡くなった人たち。彼らに祝福され、2人は再会しもう一度結ばれたのだ。

ある意味では、『タイタニック』とは、時代の変わり目の中で、生き方にもがき苦しんだ1人の女性の終活の物語と言える。

そんなローズの生き様、長い間抱えた孤独や、運命の人に出会えた喜び、その中で勇気を出して決断し行動した姿はジャックのそれに負けないくらい、私たちに感動を与えてくれた。

どんなカードが配られても、今を大切に生きたい

映画全体のテーマは、ジャックの次のセリフが表しているとおりだろう。

「人生は贈り物。どんなカードが配られても、今を大切に生きたい(make each day count)」

そんな「人生の一回性」を描いた映画『タイタニック』は多くのことを教えてくれる。

25年の時を経てまったく色褪せることなく、むしろ「自分らしく生きる」という勇気をいつまでも与え続けてくれるだろう。

たちばな やすひと プロデューサー

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Yasuhito Tachibana

1975年愛知県生まれ。東京大学理学部卒。有線ブロードネットワークス(現、USEN)、TBSグループの制作プロダクションであるドリマックス・テレビジョン(TBSスパークルに吸収合併)を経て2018年独立。プロデュースしたドラマは、『全裸監督』(Netflix)、『オー・マイ・ジャンプ!~少年ジャンプが地球を救う~』(テレビ東京)、『マリオ~AIのゆくえ~』(NHK BS)など。

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