プーチン激怒?ロシア軍と傭兵会社「内輪揉め」 傭兵会社トップが軍幹部をボロカスに言う理由

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このようにして富を築いた後、プリゴジンはワグネルの構築を開始。自身の事業拡大と、ウクライナ東部、シリア、アフリカにおけるロシア政府の政治的目標の達成のために、自らの戦闘部隊を用いるようになった。

ウクライナ侵攻が始まると、プリゴジンの一般的な知名度は急激に高まり、それまでの影の存在が一転。今ではロシアの軍事行動を代表する顔役の1人となっている。そして、ロシアの正規軍が屈辱的な退却を繰り返す中、プリゴジンはワグネルこそがロシアの利益を守る存在だと訴えるようになった。

プリゴジンは、まじめくさった政府の役人とは対照的に、戦場の地下通路、飛行中の戦闘機のコックピット、シベリアの流刑地で撮影した自らの様子をソーシャルメディアに投稿している。

ワグネルの武功に正規軍が嫉妬

ロシアの刑務所から大量の人員をリクルートしたワグネルは、高い戦闘力を持つ部隊として浮上。今回の戦争の焦点となっているウクライナの都市バフムトにおける何カ月にもおよぶ攻撃で主導的な役割を果たし、多数の犠牲者を出す正面攻撃を何度も続けて周辺の村々を占拠、バフムト制圧へと徐々に圧力を高めている。

ロシアの部隊は2月に入って攻撃を強めたものの、バフムト周辺におけるワグネルの前進を除いては有意義な成果を上げられていない。前出のクズネツによると、それが原因で軍の司令系統が妬みを抱くようになった可能性が高い。

だが、プリゴジンが一段と自らの存在感をアピールし、官僚機構を見下すようになったことを受けて、ロシア政府の内部では懸念が広がり始めている。プリゴジンによるソーシャルメディアでのパフォーマンスには、政治的な野望がちらつくためだ。

バフムトをめぐる戦いが重要局面に差し掛かりつつあるとみられる中で、軍のヒエラルキーを長きにわたって批判してきたプリゴジンの当てこすりのトーンは、以前の間接的なものから、攻撃的、あるいは破れかぶれとすらいえるものになってきている。ある音声メッセージでプリゴジンは、軍の司令系統を公に批判することを決意した理由を次のように説明した。「私に選択肢はない。最後まで貫き通すだけだ」

「私の戦闘員が次々と死んでいる」とプリゴジンは言った。

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