水面下で後継争い激化「安倍派」一周忌にらむ攻防 最側近だった萩生田政調会長の発言で広がる波紋

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このPTの座長を務めるのが安倍派の稲田朋美衆院議員。同氏は安倍氏の寵愛を受けて安倍政権時代に党政調会長や防衛相を歴任した。そのころ安倍氏が「初の女性首相候補の1人」と評価していたこともあり、現在も派内の総裁候補への意欲を失っていない。

安倍氏は、稲田氏と同様に森雅子元法相も評価していた。さらに、2021年秋の自民総裁選では、派を離れた高市早苗氏(現経済安保相)を支持し、当選した岸田首相を追いつめる場面も演出した。この3人の「安倍ガールズ」はなお健在だが、現在は立場の違いも際立つ。

2月3日の側近秘書官の「差別発言」で窮地に陥った岸田首相はその直後、LGBT理解増進法案の今国会成立に動き出した。その推進役となるのは超党派議連だが、2月15日の同議連総会で、稲田氏は自民を代表する形で「(理解増進法案の)1日も早い成立」を訴えた。

そうした中、岸田首相は2月17日、女性活躍担当首相補佐官の森雅子氏に、新たにLGBT理解促進担当を兼務させることを決め、その後官邸でLGBT関連団体の当事者と面会した際、前首相秘書官の差別発言について謝罪する一方、わざわざ森氏を紹介した。

理解増進法案をめぐっては、反対論を展開してきた高市氏が、国会審議で野党から攻め立てられている。岸田首相がそれを承知で高市氏のライバルの稲田、森両氏を同法案促進グループの代表格に位置付けたのは「岸田流の安倍グループ分断戦術」(自民長老)ともみえる。

他の派閥の領袖たちもハラハラ

安倍派内には、来年秋の総裁選をにらんで「最大派閥に明確な総裁候補がいない状況は不健全。すぐに新体制を築くべきだ」(若手)との声も少なくない。その動きが現実化すれば、岸田首相への大きな圧力となるのも間違いない。

経過や結果はどうあれ、最大派閥の後継問題がどう決着するかは「今後の政局展開も左右しかねない政治的重大事」(閣僚経験者)だ。このため、岸田首相や麻生太郎(副総裁)、茂木敏充(幹事長)両氏ら他派閥の領袖たちは今後も、「それぞれの立場で牽制しつつ、ハラハラしながら展開を見守る」(同)ことになりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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