水面下で後継争い激化「安倍派」一周忌にらむ攻防 最側近だった萩生田政調会長の発言で広がる波紋

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しかし、安倍派内の事情を知る党幹部は「そのこと自体が集団指導体制で維持されてきた派内均衡を崩し、空中分解につながりかねない」との懸念を示した。安倍派だけでなく党内の権力闘争にも複雑に絡むからだ。

安倍派領袖で党最高実力者だった安倍氏が7月に死去後、同派の後継体制づくりは混迷が続いてきた。昨年9月下旬の国葬後、いったんは塩谷氏の昇格案が浮上。しかし、同派に強い影響力を持つ森喜朗元首相や、若手議員の一部の反対で白紙に戻り、以来、現在まで集団指導体制が続いている。

安倍派の後継候補は「どんぐりの背比べ」

そもそも同派内には、萩生田氏以外に次期会長を狙う有力議員として、会長代理の塩谷、下村博文(元文科相)両氏を筆頭に、松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長の6氏が存在。「それぞれの立場で虎視眈々と将来をうかがっている」(安倍派若手)とみられている。

ただ、党内では「今のところ衆目の一致する突出した後継候補は存在しない。どんぐりの背比べだ」(自民長老)との見方が支配的。だからこそ同派としては、「集団指導体制を維持することで、会長候補同士の主導権争いによる派の分裂を回避してきた」(安倍派長老)のが実態だ。

それだけに、今回の萩生田発言は「ライバルたちを刺激」(安倍派中堅)している。総裁選出馬経験者の西村氏は、すぐさま2月1日の国会答弁で、萩生田氏に党内調整が委ねられている児童手当の所得制限撤廃について、「限られた財源で高所得者に配るより、厳しい状況の人を支援すべきだ」とあえて閣内から反対姿勢をアピールした。

一方、参院を仕切る世耕氏は、昨年末の台湾訪問で蔡英文総統と会談し、安全保障分野での連携強化を確認。蔡総統の安倍氏死去への弔意に対し、世耕氏は「偉大な政治家の思いをしっかり引き継ぎ、今後も日本と台湾の関係の深化のために努力したい」と応じるなど、安倍氏の後継者然と振る舞った。

また、安倍政権下で要職をこなしてきた下村氏も、萩生田発言を意識したように2月2日の同派会合で、「党が掲げる憲法改正4項目の条文イメージの見直し」を提起。これを受け、同派は16日にプロジェクトチーム(PT)の会合を党本部で開催し、自民が提示している改憲4項目の「たたき台素案」のうち、憲法9条や「1票の格差」問題について検討を進める。

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