医師が語る「マイペースな子」が生きやすくなる鍵 「自分はダメ」と思う必要はまったくない訳

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話を聞くのが苦手な人のなかには、真面目に聞こうとせず、ふざけてしまっているという人もいます。その場合には大人から「ちゃんと聞こう」と注意されることで、適切な態度を身につけ、状況が改善することもあります。

一方で、話を聞こうとは思っていても、集中しきれない人もいます。例えば、教科書の内容を先に全部読んでしまっているというパターン。すでに内容を知っているから、先生の話を聞いていても退屈で、校庭を眺めたりしてしまう。

その場合、授業中の話を少しくらい聞き逃しても、学習は十分にできていたりもします。聞くのが苦手で問題が起きているというよりは、先に勉強をしたから聞かなくてもわかる、という話だったりするわけです。

こんなことを言ったら怒られるかもしれませんが、先生の話が、教科書の内容より興味深いなら、教科書を先に読んだ人も聞くはずです。そうではなく、聞き手が退屈しているということは、話がつまらないということなんです。

聞くのに集中できない時間もあるけれど、勉強はしっかりできているということなら、私はそれでいいと思います。それでも聞くことが大事だというのなら、あとは先生が努力するべきです。

発想がどんどん出るから集中できないという人もいる 

また、発想がどんどんわいてきて、一つの話に集中できないという人もいます。この場合は、また別のとらえ方をする必要があります。

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例えば、授業で動物の話が出てくると、そこから最近見た動物の動画を思い出して、授業と関係ないことを考え始めてしまう。最初は授業を聞いていたものの、意識がだんだん授業から離れていくというパターンです。親の話を聞いているときにも、途中から違うことを考えてしまったりします。 

このタイプの場合には、話の内容を理解する前に違うことを考えているので、何か対策をとったほうがいいでしょう。例えば、集中が切れたときに親や先生、同級生に一声かけられると、元の話に意識を戻せることもあります。まわりにそういうことを頼めるなら、頼んでみるのもいいですね。

話を聞き逃すことが多い場合には、自分から聞き返すことや、大事な話をメモすること、メモしてもらうことを試してみるのもいいと思います。

また、場合によっては、少人数のクラスを利用できることもあります。大勢のなかでは集中するのがどうしても難しいという人は、学校側と相談して、個別に支援を受けることもできるんです。

本田 秀夫 信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授

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ほんだ ひでお / Hideo Honda

精神科医師。医学博士。特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。1991年より横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。その後、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長などを経て、2014年より現職。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。日本自閉症協会理事、日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本発達障害学会評議員。2013年刊の『自閉症スペクトラム』(SBクリエイティブ)は5万部超のロングセラー。

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