ユニクロが大幅賃上げできる「生産性」のカラクリ 同業他社と異なる人員配置の「しくみ」とは?
グラフは国内ユニクロ事業の過去5年間の人時売上高と人時生産性の推移である。
グラフを見てわかるように、約1万5000円で安定しているのがわかる。
なぜ、安定的に同じ生産性をキープできるかというと、同社においては、生産性は従業員が「がんばった結果」ではなく、「人員(シフト)計画を組むうえでの基準値」であるためだ。
つまり、同社では、売上高予算を営業時間で割って1時間当たりの売上高予算を算出し、それを基準目標とする1万5000円で割ったものが、配置可能な人員数となる。人時売上高が1万5000円になるようにしか人員を配置することが許されない「しくみ」なのである。
ユニクロの生産性が高い理由
ファクトブックの国内ユニクロ事業の「平均稼働人員(従業員換算)」から「国内従業員(常勤)」を引けば、従業員換算にしたパートアルバイト人数が割り出せるが、同時に一緒に働くスタッフの内訳は、常勤スタッフ57%:パートアルバイト43%となる。1人当たり売上高を高くしようと思えば、パートアルバイトといえども、高い生産性で働いてもらわなければ、全体の水準は上がらない。
つまり、前者の約6割の社員が頑張るだけではなく、4割強のパートアルバイトが高い生産性で仕事ができるようなしくみをつくり、それを社員がマネジメントしてこそ、ユニクロの高い生産性が叩きだせるわけだ。
次に、企業が事業で稼ぐ粗利高を人件費にどれだけ充てているかを表す数値に「労働分配率」がある。計算式は「労働分配率=人件費÷粗利高(売上総利益)」である。
グラフは同業上場企業との比較だ。
筆者がこれまで関わってきたアパレル小売業の労働分配率は30~35%くらいの水準だが、ファーストリテイリングの場合、コロナ禍の2020年8月期を除き27%前後と労働分配率は低めである。
誤解のないように付け加えるが、同社が従業員に十分な給与を払っていないというわけではない。同社は生産性が高いため、業界の中でも比較的高い給与を払っているが、それでも労働分配率が20%台の後半に収まっているということである。粗利率を上げることができれば、同じ労働分配率の範囲内でも、賃上げをする原資は捻出できる。
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