成果を出すチームに必要なのは「強さ」ではない訳 組織の成長には「感謝と支え合い」が欠かせない

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欠けている部分があるからこそ、人と人との心が繋がり合う余白が生まれる。そう考えると、グローバル化、競争社会、格差社会、分断を生み出した20世紀型の資本主義モデルからの移行期である現代において、日本が本来持つ美意識、文化や価値観、精神性が世界からより必要とされるはずです。

欧米流のデザインは、元来、宗教との結び付きが強いといわれています。そのため、神の存在を伝えるというように、デザインを通して何かのメッセージを表現するというアプローチが一般的です。

一方で、日本は“今”という考えを大切にしてきました。

古池や蛙飛び込む水の音

松尾芭蕉による、とても有名な俳句です。欧米流の思考では、「この俳句は何を伝えたいんだろう」となってしまいますが、日本的感覚ではこの俳句を読んでその意味を考えることはないでしょう。ただ“今”その瞬間の情景が美しく頭に浮かびます。

日本人が“今”を尊重してきたことには、私たちの祖先が自然の中に溶け込んで生きてきたこととも関係します。

昔の日本には、「自然」という言葉がありませんでした。「自然」が“Nature”の意味で使われるようになったのは、明治時代の終わり頃です。これは人の周辺にある木も草も川も山も当然の存在であり、総じて意味を定義する必要性がなかったからだと考えられます。

日本の建築は元々木造です。欧米のように、何百年と残る石造の建築はありませんでした。自然の移り変わりを前提とした世界の中で、不変的なものではなく、「変わり続ける中での今」に価値を見出したからだといわれています。

日本的思想を持ったチームだからこそ

“弱さ”や“今”を尊重して培われてきた日本の文化は、20世紀にはそぐわなかったのかもしれません。しかし、今は時代の転換期です。

変化の激しい時代においてその変化に一喜一憂するのではなく、過去でもなく、未来でもなく、自分の意識を“今ここ”に置く。これは、肉体的、精神的、そして社会的にすべてが満たされた状態を目指す「ウェル・ビーイング」の考えとも共通します。

また、近年では、禅の概念をもとにした「マインドフルネス」という考えが広がり、GoogleやYahoo!など欧米の大企業も研修で取り入れています。「自然との調和」という点で、「サステナビリティ」の概念は、すでに世界中の企業が無視できなくなっています。

「心の豊かさとは?」「人間の真の幸福とは?」が問われる時代。幸せとは心の状態です。未来でも過去でもなく、“今”をどう生きるのかが、その人の心の状態をつくり上げます。

今、日本が古来大切にしてきた考え方や精神性、文化が世界に求められています。日本の経済成長の伸び悩みが叫ばれますが、人々の心豊かな暮らしの実現に向けて日本が世界に貢献できる伸びしろは、まだまだ大きいと言えます。

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