防衛力強化で石垣・与那国に生じる「不安の正体」 タモリさん番組で「新しい戦前になる」と発言

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2月13日、在京メディア向けに与那国島の駐屯地等の視察が実施された新田原基地(宮崎)(写真:筆者提供)

昨年の暮れ、テレビ朝日系「徹子の部屋」に出演したタモリさんが、黒柳徹子さんから「来年(つまり2023年)はどんな年になりそう?」と聞かれ、「新しい戦前になるんじゃないですか」と答えたシーン、ご覧になった方も多いのではないだろうか。

ロシア・ウクライナ戦争ではすでにロシア軍の侵攻が始まって1年近くになる。タモリさんが指摘した「新しい戦前」とは、ウクライナの話ではなく、石垣島や宮古島、それに与那国島など、沖縄県の先島諸島に忍び寄る「戦争の足音」を指す言葉に思えて、終戦直後に生まれたタモリさんらしい指摘だと感じたものだ。

事実、先島諸島の島々では、中国による台湾侵攻や尖閣諸島上陸に備え、住民避難に向けた動きや、岸田政権が進める防衛力強化を受けた動きが活発化している。

シェルター建設を陳情した与那国島

2月9日、与那国町議会の大宜見(おおぎみ)浩利副議長らが防衛省などを訪ね、島内への避難シェルターの早期設置を要請した。要請に加わった嵩西(たけにし)茂則町議によれば、松野博一官房長官、浜田靖一防衛相ともにシェルター建設には前向きな姿勢を示し、「内閣官房と調整しながら検討していく」との答えが得られたという。

与那国島では、台湾有事に備え、中国から武力攻撃を受けた際の応急対策にあてるため、町独自の基金を設ける方向で準備を進めている。

国民保護法では、武力攻撃事態と認定された後は、国が住民避難に関するさまざまな支援をすると定めているが、認定される前の避難は対象となっていない。そのため、有事が懸念される段階で、住民の避難にかかる費用を町が負担しようというのだ。

ある島民は語る。

「私は自然が好きで神奈川県から移住してきたのですが、実家からは『戻って来い』と言われ続けています。避難費用の件は、必要経費は渡すから各自で生き延びてくださいというものですよね? シェルターもいつできるのかわかりません。当然、不安は募ります」

与那国島に陸上自衛隊駐屯地が設けられたのは、2016年3月。それからまもなく7年になる。その与那国島では今年3月、国と県による台湾有事に備えた図上訓練が予定され、その先には、電子戦部隊やミサイル部隊の増派も予定されている。

そうなれば、与那国島はもとより日本としての防衛力は強化される。反面、ロシア・ウクライナ戦争において、ロシア軍がまずウクライナの軍事拠点を攻撃したように、中国軍に標的にされやすくなるリスクも伴う。

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