スシロー、社長の「ツイッター降臨」が意味する事 緊急事態こそ広報力・柔軟性が浮き彫りになる

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ポイントの2つ目は「経営者に突破力があるか」だ。今回、スシローは社長自ら、公式ツイッターを通じて、感謝のメッセージを発している。この騒動はスシローが何か直接、不祥事を起こしたわけではない。あくまで「被害者」なので、本来、社長が出てくる必要はない。だが、トップである社長があえて前面に出たことで、支援の輪が広がった。

「経営者の積極的な関与」をうかがわせる痕跡が、ツイッター以外にも存在する。それが前述のプレスリリースだ。スシローは通常、プレスリリースを自社サイトに加えて、プレスリリース配信サイトのPR TIMESでも公開している。配信サイトを用いたほうが、より多くの人の目に触れるからだろう。内容は「ひなまつり限定商品が本日から予約開始!」といった新商品やキャンペーンの告知が中心だ。

PR TIMESで配信されているスシローのプレスリリースにはメディア関係者のみが閲覧できる問い合わせ先が書かれている。そこには、親会社の株式会社FOOD & LIFE COMPANIESの広告宣伝部の担当者名が記載されている。平時のプレスリリースの運用は「商品広告」目的が中心なのだ。

だが、今回の騒動に関するプレスリリースは、PR TIMESでは配信されず、自社サイトのみでの公開。メディアからの問い合わせ先も「広告宣伝部」ではなく「コーポレートコミュニケーション部 広報課」だった。今回の対応が通常の広告的な告知とは異なり、社長直下の広報として行われたことの証左だ。

「日々、消費者と接しているか」も問われる

そして最後のポイントは「日頃から企業として、消費者に接しているか」だ。

日常的に消費者との接点を持たない大企業の広報は、どこか「ひ弱さ」を感じさせることが多い。こうした大企業の広報が普段接するのは、限られた「大手メディアの担当記者」たちだ。担当記者はその企業と継続的に付き合い、取材しなくてはならないので、普段から関係構築を大切にしている。通常、担当企業が「よほどの不祥事」でも起こさない限り、厳しく追及することはないのだ。

だが、日常的に消費者と接する企業はそうはいかない。普段から「理解不能な問い合わせ」や「理不尽とも思えるお叱り」にさらされることになる。私も番組制作者だった頃、誤って「泥酔した視聴者」からの電話に何度か出たことがあったが、そのたびに対応に苦慮した記憶がある。

先述のスシローのプレスリリースを見ると、「報道からの問い合わせ先」として「コーポレートコミュニケーション部 広報課」とある。一方、「消費者からの問い合わせ先」には「コーポレートコミュニケーション部 カスタマーサポート課」と記されている。「課」が違うだけで、同じ「コーポレートコミュニケーション部」なのだ。消費者対応と広報の距離が、日常的に近いことをうかがわせる。今回のツイッターの「社長降臨」のような、「直接消費者に対応する広報」には慣れているのだろう。

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