スシロー、社長の「ツイッター降臨」が意味する事 緊急事態こそ広報力・柔軟性が浮き彫りになる
ここからはやや余談だが、私の取材経験で言うと、たとえば前述したような「広報対応が遅い企業」には共通の特徴がある。社長にインタビューを依頼した際、「やたらと細かい質問項目」を事前要求してくるのだ。
通常、記者が経営者にインタビューするときは、大まかな質問項目だけを決めておく。取材とは「まだ知られていない事実の掘り起こし」でもある。それゆえ「事前準備した基本的な質問項目を押さえつつ、知られざる事実が出てきたら、そこを掘り下げていきたい」のだ。実際に話を聞いた感触を見ながら、その場で質問を紡いでいく。なので、事前に詳細に用意しようとしても無理なのだ。
だが「広報対応の遅い企業」にとって、「社長のインタビュー」は一大事だ。社長から広報への指示なのか、あるいは広報が社長に忖度(そんたく)しているのか。必ずと言っていいほど、事細かな質問項目を要求してくる。インタビューが始まってしまえば、詳細な質問項目を提出していたとしても、記者は臨機応変に質問するもの。
そもそも要求自体に意味がないわけだが、柔軟性に乏しい企業はそれを求めるし、結果的に緊急時の対応も遅れがちとなる。
今後は法的に毅然と対応することも重要だ
さて、「スシローの広報対応の見事さ」を3つのポイントから見てきた。だが、そもそも危機管理の必要が生じず、広報の出番もないほうが会社としてはいいに決まっている。
「何者でもない自分でも一瞬でスターのように特別な存在になれるかも」という幻想を抱かせるSNS時代。この手の迷惑行為がこれからも断続的に発生するのは避けられそうもない。店内での再発防止策を取ると同時に、法的に毅然と対応することも必要だ。
スシローはレーンに商品を流すのをやめ、タッチパネルで注文した商品が直接、席に届く運用に変更し、さらにテーブルとレーンの間に皿を取るスペースをあけたアクリル板を全店舗で設置した。
さらに2月10日夕方には、感謝セールとして「平日限定 全品10%」(2月13日~17日)のキャンペーン実施を発表。公式サイトの「NEWS」のページに加え、ツイッターでも画像つきで投稿した。
この画像では「店頭での直接のお声がけや、お電話を通して、私たちの想像をはるかに越えるご声援」が届いていることを明かしつつ、感謝の気持ちを改めて表明。そのうえで、「社内会議で、私たちの気持ちを、なんとか形にしてお返しさせていただけないかとの声があがり、全国の店舗で働く社員の意見も参考に、私たちに何が出来るかを検討いたしました」と、全品10%OFFキャンペーンに至った経緯も明かしている。
騒動直後だけではなく、落ち着きを見せた後の対応も、強かなほど見事だった。
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