東大理Ⅲ生「留年取消訴訟」、地裁差し戻しの重み 「単位不認定は争いうると東京高裁が明示した」

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地裁判決によると、「法令や東京大学の学則上、進学選択の許可・不許可に係る定めは見当たらない」という。加えて東大の「履修の手引きにおいても、所定の単位数の取得等といった進学選択条件を満たしたものについて進学選択が可能となる旨が定められているのみ」であるとして、杉浦さんが進学選択をできなかったのは、実験の「単位を取得することができなかったこと自体から生じた結果」として、東大がそれとは別に処分をしたものではないと認定した。

そして、「授業科目の単位認定行為それ自体は大学内部における教育上の措置であって特段の事情のない限り司法審査の対象とはならない」としたうえで、「原告が降年となっても直ちに東京大学に入学した目的を達することができないわけではない」と断じて「特段の事情は認められない」と「門前払い」を宣告した。

杉浦さん側は、コロナが発病して授業が受けられなかったのに十分な救済措置を受けられなかっただけでなく、不本意な減点があったことなどについて訴えたが、裁判ではいっさいかえりみられることはなかった。

東京高裁は訴えが不適法と「断ぜられない」

対する東大側は、単位の認定は「純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきもの」と主張。「単位不認定の評価にあたっては公平・公正な立場から担当教員らが判断した結果」などとして、杉浦さんの単位が認定されなかった事情や減点など、具体的なことに言及しなかった。最初から「法律上の争訟にあたらない」などとして、「門前払い」にすることを求め、東京地裁は、東大の主張に沿った判決を下した。

この判決について、東京高裁は、過去の判例をひきながら、単位不認定処分と降年処分について杉浦さん側が「処分行為が存在すると解すべき根拠」や「社会的不利益を受けている旨」を主張するなどしているため、訴えが不適法と「断ずることはできず、さらに弁論をする必要がある」と指摘した。

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