「日本の経済安全保障」主要100社が答えた実状 推進法とウクライナ情勢を受けた影響や方針は?

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中国事業において留意する事項

中国市場において意識するリスクとして、2021年に最上位だった「政府の方針変更による事業存続リスク」が今年は2番目に後退し、代わりに3番目に回答が多かった「地政学リスク」の回答率が63.6%から84.5%に増加して2022年は最多回答となり、順位が逆転した。

他にもウクライナ情勢を受けた傾向として、新たに設けた選択肢「台湾有事を想定した対応」が3番目に多い回答(71.8%)となり、前年に2番目に回答が多かった「技術情報を含めた情報漏洩」の上位に食い込んだが、その情報漏洩も4番目に回答が多い64.8%となっており、決して低い回答率ではない。

原材料は中国、生産設備はアメリカという 
板挟みを脱することはできるのか

2021年の100社アンケート(地経学ブリーフィング、12月24日)では、政府による規制と企業による競争・成長の両立、そして経済と安全保障の両立という、「2つのバランス」が経済安全保障戦略の肝であることを提言した。

今年の調査では、地経学リスクの高まりと米中対立による保護主義の高まりが一層顕著に見られた。一つの典型が半導体関連産業であり、(中国も含めた)自由競争よりも規制強化を、経済よりも(軍事技術の優位を確保する意味での)安全保障を優先したのが今年の特徴だ。鈴木一人が「アメリカと中国『半導体めぐる強烈な対立』の重み」(地経学ブリーフィング、2023年1月9日)において指摘したとおり、軍事にも使われる先端半導体の製造は台湾や韓国、設計はアメリカ、半導体製造装置は日米オランダに強みがあり、中国は劣位にある。同時に、原材料の多くは中国に依存しており、米中対立が激化すると、最悪はサプライチェーンが成立しなくなる。

アンケートでは業種に跨り「米中どちらかを選ばされる状況を回避するべき」との記述回答を寄せた企業が複数あり、政府による外交に期待する声も多数あった。政財学の知恵を持ち寄って米中板挟みや米中二択を回避するための戦略を練る必要があるが、同時に、ウクライナ情勢はそのような最悪の事態をも将来想定する必要を警告している可能性があることにも留意したい。

(鈴木均/地経学研究所主任客員研究員)

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地経学ブリーフィング

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『地経学ブリーフィング』は、国際文化会館(IHJ)とアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が統合して設立された「地経学研究所(IOG)」に所属する研究者を中心に、IOGで進める研究の成果を踏まえ、国家の地政学的目的を実現するための経済的側面に焦点を当てつつ、グローバルな動向や地経学的リスク、その背景にある技術や産業構造などを分析し、日本の国益と戦略に資する議論や見解を配信していきます。

2023年9月18日をもって、東洋経済オンラインにおける地経学ブリーフィングの連載は終了しました。これ以降の連載につきましては、10月3日以降、地経学研究所Webサイトに掲載されますので、そちらをご参照ください。
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