高まる台湾有事への危機感
ウクライナ情勢の甚大な影響が明らかになった一方で、日本企業にとって経済安全保障への取り組みを行うにあたり一番の課題は、昨年に引き続き「米中関係の不透明性」(72.2%、前年より微減)だった。対ロ制裁をめぐる米中の溝が埋まっていない現状がここにも反映されているといえよう。次いで国際情勢に関する情報収集(65.8%、前年より1割増)、リスク評価(63.3%)が課題として続いた。
とりわけ「ウクライナ情勢に伴う対ロ制裁の不透明性」(22.8%)よりも「台湾有事を想定した対応」(50.6%)に倍近い回答が集まったことに注目したい。さまざまな対ロ制裁が出揃ったウクライナ情勢よりも、回答企業の2社に1社が(ウクライナ情勢を踏まえつつ)将来的な台湾有事を見据え、危機感が高まっていることがわかった。
台湾有事を想定する際、米中関係および現地事業を展開する日本企業の動向が最も重要である。米中対立の激化はトランプ前政権時から続いているが、3社のうち2社が「米中対立の影響が出ている」(昨年より微増し63.2%)と今年も答えており、最も影響が出ている項目として、「アメリカの規制強化によるコスト増」を3社のうち2社が回答している(微増し64.4%)。
これに次いでサプライヤーの変更(37.3%)、売上減(27.1%)などが選ばれ、回答率も前年と同水準だった。今年新たに選択肢に加えられた「ウクライナ情勢を受けた対ロシア制裁によるコスト増」が27.1%、台湾有事を想定した対応によるコスト増が27.1%、夏にアメリカで成立したインフレ削減法、CHIPS法によるコスト増が13.6%となった。投資意欲減退に伴う取引の遅延やキャンセルを回答した企業が約3.8%増加し11.9%に達した。
進むサプライチェーンの強靭化
いわゆる経済安全保障推進法(以下、推進法)は2022年5月に国会を通過し、4つの制度のうち、①重要物資の安定的な供給の確保、および③先端的な重要技術の開発支援にかかわる部分が8月から施行された。
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