「小児科と耳鼻科」どちらに連れて行くのが正解? 開業医が明かすクリニック同士の関係のリアル

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眼科の先生が、目に関して圧倒的な知識を持っているように、耳鼻科の先生も耳・鼻に関して圧倒的な知識を持っている。その専門性に小児科医はとうてい敵わない。でも、風邪や中耳炎の子どもをめぐって患者の取りあいをしているような状況はなんだか違うような気がする。

呼吸困難に陥っていた3歳児

以前にこんなことがあった。喘息でうちのクリニックがかかりつけの3歳児が風邪を引いた。鼻水と咳が出たので、お母さんはまず耳鼻科に子どもを連れて行った。そこでいろいろと薬を出してもらい、その足で咳を診てもらおうとうちを受診した。

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ぼくはその子を一目見て、ギョッとなった。呼吸困難を起こしているのである。聴診器を当てるまでもなく、かなり強い喘息発作である。あわてて胸の音を聴いてみると、ひどい喘鳴がある。

酸素飽和度モニターを付けると、値は87~89%。これはまずい。大学病院に電話して救急車を呼んだ。救急隊員には酸素吸入をお願いした。もちろん、この子は大学病院でしっかりと治療していただき、ことなきを得たが、喘息は甘く見てはいけない病気だ。鼻水だけを診て、呼吸困難に気づかないというのはどうなのだろうか。

そういう意味では、やはり子どもの病気に関して診断・治療の入り口は小児科にしてほしい。

小児科の先生も自分の知識・技量の限界をよくわきまえて、必要なタイミングで患者を(耳鼻科を含めた)他科に紹介すべきだ。自分で治せない患者を抱え込んではいけない。

小児クリニックをうまく運営していくためには、信頼して紹介できるいい耳鼻科クリニックを見つけておくことがとても重要だと、開業後しばらくして痛いほどよくわかった。

松永 正訓 小児外科医

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まつなが・ただし / Tadashi Matsunaga

1961年東京都生まれ。千葉大学医学部卒業、小児外科医に。同大附属病院で小児がんの治療・研究に携わる。2006年、「松永クリニック小児科・小児外科」開業。著書に『運命の子 トリソミー』(第20回小学館ノンフィクション大賞)『発達障害に生まれて』等。

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