「小児科と耳鼻科」どちらに連れて行くのが正解? 開業医が明かすクリニック同士の関係のリアル

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あるお母さんが、耳鼻科とうちのクリニックの使い分けを教えてくれた。

「軽い風邪なら松永先生のところに行きます。少しだけ薬を出してもらってそれで治るから。でも風邪がひどいときは耳鼻科に行きます。たくさん薬を出してくれるので、そのほうが治るんです」

ぼくは、なるほどーと思ったが、同時にこう心の中でつぶやいた。

(いやいや、お母さん、風邪は自然に治るんですよ。薬が多くても少なくても関係ないよ)

また、別のお母さんはこう言った。

「鼻水だけのときは耳鼻科に行きます。咳が出ているときは、松永先生のところに行きます」

これも、なるほどーと思った。

でも、それで本当にいいのかな? 小児科医は、子どものことならば「何でも屋さん」である。結膜炎も診るし、中耳炎も診るし、アトピー性皮膚炎も診るし、夜尿症も診るし、便秘も診るし、頭部打撲も診る。まず、病気の診断・治療の入り口として小児科を受診してみてはどうだろうかと思ってしまう。

「餅は餅屋。余計なことはしないで」

え、小児科で中耳炎をちゃんと診られるかだって? ぼくの経験では、中耳炎のお子さんの95%くらいはうちで治る。治りが悪いときは、信頼できる(ちょっとうちから遠方なのだが)耳鼻科に紹介状を書いて診てもらっている。これでいいのではないだろうか。

以前にぼくが1歳の子の中耳炎の治療をしていたとき、いったんきれいになったけど、短期間で再燃したことがあった。鼓膜を観察しようとしたら耳鏡の電球が切れている。予備の球を装着したらそれが不良品で、鼓膜が見えなかった。なので、近隣の耳鼻科に紹介状を書いて診てもらった。

1週間くらいして返信がきたが、そこにはこう書かれていた。

「餅は餅屋。余計なことはしないで、中耳炎は耳鼻科に任せて」

返信にこういう文章を書く神経に驚いた。もらった返信は電子カルテのパソコンにスキャナーで取り込むので、モニター画面に表示される。だから親にも見られる。さすがにこれはないんじゃないかと思って、この返信はスタッフに渡さず、院長室の机の中にしまってある。

風邪に伴って子どもが耳の痛みを訴えることは日常的なことである。耳痛のある子をすべて耳鼻科に紹介していたら、毎日のように紹介状を書きまくり診療が成り立たない。小児科にはそれくらいたくさんの中耳炎の患者が来ているという現実を知らないのだろうか。

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