ベトナムを甘く見る人が知らない「驚くべき正体」 戦争のイメージが強いが、発展の萌芽があった
増田:私も、2020年にホーチミンに行ったときに、書店街に行きました。東京の書店街・神保町よりもおしゃれな感じで、遊歩道の両側に、新刊書店はもちろん、古書店、児童書専門の本屋さん、移動図書館、カフェが併設されたお店などがずらっと並んでいました。
英語をはじめ、外国語の本を扱う書店も多く、もちろんマンガもありましたよ。ドラえもんやポケモンなど日本のキャラクターも大人気。おしゃれな文具が目に留まって、ベトナム料理が描かれたポストカードやノートなどをお土産に購入しました。
フランスの風情を感じる街並み
池上:ベトナムは19世紀後半からフランスの植民地だったので、街並みがおしゃれですよね。アジアのパリとも呼ばれていました。
増田:コロニアル様式と言われる建物ですね。ホーチミンの街を歩いていたら、レンガ造りの大きな教会があってびっくり。地図の英語表記を見たら「ノートルダム大聖堂」とあり、ここにもフランス統治下の名残があるんだと納得しました。日本語訳では「サイゴン大教会(聖母マリア教会)」で、前庭には大きなマリア像もあります。
池上:サイゴン中央郵便局もきれいですよね。ここは、パリのオルセー駅の駅舎、つまり現在のオルセー美術館の建物をモデルとしています。いまでも郵便局として市民が利用していますが、古い切手やお金、街の風景を描いたポストカードなどを販売していて、お土産を探すのにもいい場所です。
増田:私はここで、当時の街並みが描かれたポストカードと切手を買いましたが、お札とコインを集めている池上さんは、古いお札を買ったんではないですか?
池上:ばれちゃったかな(笑)。私自身のお土産の定番は、訪問した国の歴史が刻まれている古いお札と、ユニークなメッセージの図柄のTシャツ。ここではお札のほかに、胸にベトナム料理のフォーとアイフォンをもじった「iPhó」なんて描いてあるTシャツを買いました。
増田:街並みは美しいですが、バイクであふれていますね。歩道にまで乗り上げてくるので、慣れるまで大変でした。
池上:フランスの風情もかき消されてしまうほどですよね。余談ですが、ホーチミンで道路を渡るときバイクが止まるのを待っていると、いつまでも道を渡れないので、気合で一定のスピードで渡ってください。そうすると、バイクがよけてくれます(笑)。
増田:街のあちこちには、いかにも社会主義の政策を感じさせる看板もありますよね。ベトナムは、中国と同様に、政治は社会主義、経済は資本主義です。
池上:そうですね。これまで社会主義といえば、政府が経済をコントロールするのが通常のやり方でした。そのため、競争が生じにくく、経済が低迷してしまう。そこで、政治体制はそのままにして、法律に違反さえしなければお金もうけをしてもいいという資本主義のやり方を導入したわけです。
増田:グローバル化が進むなか、アメリカに代表される資本主義国とも対峙していく必要が出てきたのですね。ベトナムでは、1986年に、経済の自由化、ドイモイ(刷新)政策が始まり、市場経済を重視する方向に舵を取りました。