統一教会以外の宗教団体名を伏せる大手メディア オウム事件以降続く「空白の30年」の罪深さ

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厚生労働省で開かれた記者会見で被害を訴える宗教2世たち(筆者撮影)
安倍晋三元首相への銃撃事件を受け、盛んに報道されるようになった世界平和統一家庭連合(以下、統一教会)の2世問題。しかし、大手メディアは統一教会以外の宗教団体に関する報道には消極的だ。宗教2世問題を追い続けてきた筆者が、オウム事件以降の宗教報道を振り返る。
(後編「宗教『勧誘注意』の報道で団体名を伏せる謎」は2月4日配信)

「カルト問題」をめぐるメディアの空白

2022年7月、安倍晋三元首相への銃撃事件が起きるまで、大手メディアや政治が統一教会の問題を見過ごしてきたことを指す、「空白の30年」という言葉がある。その「空白」を埋めるかのように、大手メディアが統一教会問題を報道し、政治が動き、「宗教2世」も含め、被害当事者や支援者たちの声も頻繁に取り上げられるようになった。

統一教会に関して、1980~90年代から声を上げ続けてきた人々からすれば、隔世の感だろう。しかし一方で、身近な宗教2世の間で「なぜメディアは統一教会問題しか報じないのか」という声が上がる。統一教会以外でも宗教2世について、社会的に放置すべきでない深刻な被害が起きている。しかし大手メディアでは、正面切ってそれを報じることがない。

つまり「カルト問題」をめぐるメディアの空白は、まだ終わっていないのだ。このままでは今の「統一教会を論ずる(報じる)ブーム」が過ぎた後に、再び、空白が訪れるのではないか。

その空白を生じさせないためにも、フリーランス記者としてカルト問題や悪質な宗教を追及してきた立場から、メディアの報道姿勢を論じたい。もちろん、「何を報じるか」「何を報じないか」「どう報じるかは」は、それぞれのメディアが自律的な立場で、外部からの影響を排して決める事柄である。

しかし安倍氏の事件を機に宗教2世の問題がクローズアップされたように、メディアが積極的に報じることで、社会的に認知・発見される問題がある。それだけ大手メディアの役割と責任は大きいといえるのではないか。宗教2世、あるいはカルト問題をめぐるメディアの報道姿勢について、振り返りたい。

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