正確な見通しは伝えられなくても、信頼できる組織からの呼びかけがあるだけでも心構えができるものだ。まったく先が見えない中では、不安でいくら疲れていても眠ることすらできないだろう。
これは、今回JR京都線・琵琶湖線で車内に閉じ込められた乗客にも当てはまる。乗り合わせた乗客のインタビューも多数ニュースで報じられたが、もっとも不満が大きかったのは、“閉じ込められたこと”ではなく、“見通しが立たなかったこと”だった。
今どういう状況なのか、回復に向けてどういう作業が行われ、どのくらいの時間がかかるのか。それがダメな場合、その場で下車して歩いて駅に向かうといった判断はされるのか、といった情報がほとんどなかったからだ。
社会の仕組みを変えるべきとき
テクノロジーや情報伝達の機器の進歩で、迅速かつ正確に災害などに関する情報が手に入るようになった一方で、台風や集中豪雨、そして今回のような強烈な暴風雪など自然災害の猛威は、減少するどころか年々増えている印象があり、交通機関の安全をこうした猛威からどうやって守るのかが一層難しい時代に入っている。
また、どの組織も経費削減のために人員を減らし、災害に対応するために臨時に人手を割くような余力を抱えていないという事情もある。とはいえ、関係機関は教訓を広く共有し、JRやNEXCO各社だけでなく、自治体をはじめ消防や警察、地元企業など多様な組織と連携して、同じ過ちをして利用者の健康や命を危険にさらさないよう腐心すべきであろう。
頑健なトラックの運転手と言っても、ガソリンの残りの分量と荷主からの厳しいオンタイムの要求を心配しながら、空腹やトイレを我慢するのはどんなに苦痛だろうか。
いつ動くかわからない電車の中に、10時間近くも閉じ込められた高齢者や妊婦のことを想像するだけで、胸が締め付けられる。こうしたニュースを聞くことがないよう、社会の仕組みを考えていくべきときであろう。
新名神の当該区間の通行止めが全面的に解除されたのは、26日午後11時半。通行止めが25日午前3時50分に始まってから、およそ44時間、立ち往生が始まってからほぼ丸2日経ったころだった。
最後に、極寒の中、閉じ込められたドライバーに水や食料、簡易トイレを配布したり、スコップで雪に埋もれた1台1台の車の雪かきを行ったNEXCOの関係者などのご苦労に頭を下げたい。
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