衆院山口補選、安倍家vs林家「遺恨対決」激化の行方 山口2区と4区補選、「定数減」にらみ交錯する思惑

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そもそも、下関市を主要地盤とする「安倍vs林」の覇権争いは、中選挙区時代の先々代にまでさかのぼる。

とくに安倍氏の父・晋太郎元外相(故人)と林芳正外相の父・義郎元蔵相(同)は中選挙区時代の衆院山口1区(定数4)で闘い続け、小選挙区制移行で下関市が山口4区となった際は、林氏が比例転出し、息子の芳正氏は参院山口選挙からの中央政界入りを余儀なくされた経緯がある。

ただ、芳正氏は安倍氏が再登板を決めた2012年の自民総裁選に参院議員として出馬(最下位で敗北)してから衆院鞍替えを狙い、岸田政権誕生直後の2021年10月の衆院選で岸田派ナンバー2として山口3区から出馬、圧勝で衆院転身を果たした。

同じ衆院選の山口4区で安倍氏も圧勝したが得票を減らした。「林氏支持派が投票しなかった」との見方も広がり、その時点で安倍、林両陣営のせめぎ合いが表面化。その後の安倍氏の死去で、新3区の自民公認争いを巡る「下関戦争」は、林氏優勢の状況となった。

現在の山口の衆院小選挙区は、1区が高村正大(52)、岩国市など東部の2区が岸信夫(63)、宇部、萩両市を含む3区が林芳正(61)が現職。安倍氏が四半世紀にわたって議席を維持してきた4区に後継・吉田氏が補選で当選すれば、次期衆院選は自民現職4氏が3つの議席を奪い合うことになる。

衆院4区の補選実施で“ミニ国政選”に

一方、1月25日に2021年衆院選の「1票の格差」訴訟で最高裁の合憲判断が下ったことで、衆院では欠員となっている千葉5区、和歌山1区、山口4区の補欠選挙が4月23日に実施されることが確定。これに山口2区も加われば、岸田首相の政権運営に対する中間評価の“ミニ国政選”ともなる。

通常国会冒頭の衆参代表質問で、「防衛増税」に絡めて岸田首相に衆院解散を迫った野党陣営は、統一補選で1つでも勝利することで、次期衆院選への弾みにしたいところ。なかでも狙うのは千葉5区。薗浦健太郎(自民離党)前衆院議員が「政治とカネ」の問題で辞職したことによる補選だ。

与党に逆風が吹く中、自民県連は公募を進めている。対する野党陣営は立憲民主、日本維新の会、国民民主、共産の各党がそれぞれ候補者擁立を決めているため、「最終的には野党選挙協力の成否がカギを握る」(立憲民主幹部)とみられている。

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