国産の場合はそれとは異なる戦略です。デジタルファーストではなく、コンテンツの2次利用の意味合いが大いにあります。地上波テレビの見逃しやアーカイブ作品は独占配信コンテンツよりも再生数を伸ばす傾向にありますから、これまで大胆に方針を変えることはなかったのです。回収の見込みが立てにくい投資よりもコストを抑えることに重きを置く日本らしさが表れてもいます。
値上げと打ち止めの2択ではない
GYAO!はもともとUSENが始めたサービスですが、2009年にヤフーが買収し、現在は韓国ネイバー社とソフトバンクグループの合弁会社Zホールディングス傘下の動画配信サービス事業の1つです。LINEも持つZホールディングスがグループ内の動画配信サービスを統廃合するなかで、GYAO!の撤退を決めたのは明らかです。縦型ショート動画サービス「LINE VOOM」に動画領域のグループ経営資源を集中させていくことを発表していることからも裏付けることができます。TikTokに対抗する縦型ショート動画で勝負をかけることを選んだというわけです。
今後、GYAOやDAZN のように他の動画配信サービスも合理的な判断を下すことは十分に考えられます。ただし、選択が値上げと打ち止めの2択に限ってしまうわけではないでしょう。ABEMAがサッカーW杯の独占配信権を取得して勝負に出たような策に踏み切ることもあり得ます。主戦場がテレビから配信に移りつつあるなか、スポーツコンテンツが利用者獲得のカギを握ると言われているところです。
また各国にも国産サービスがあまたあり、自国以外のコンテンツをラインナップに揃える傾向は高まっていますから、海外輸出で攻めるのも1つの手です。韓国では国産サービス発の独占配信オリジナルドラマも大量に作られています。韓国最大のEコマース企業が運営するクーパンプレイは悪女物語のドラマ「アンナ」でヒット作を作り出したことで、韓国国内の動画配信市場で一気に浮上しています。こうした強力作があれば海外展開によって回収もできます。
いずれもコンテンツへの投資が必要ですが、今回の明暗が分かれた動画配信サービスの状況を見る限り、勝負時にあることは間違いありません。
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