「値上げDAZNと終了GYAO!」、明暗分かれたワケ 日本の動画配信サービス「複雑すぎる事情」

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かたや値上げを発表したDAZNは動画配信の定額制サービスの勢力図の中で、Netflix、Amazon、Disney+のグローバル3強に続く、U-NEXTやHuluと並ぶ2番手グループに位置します。会員数は概算ですが、200万人ほどが見込まれます。サッカーJリーグが売りのスポーツに特化したコンテンツ群の割には健闘しています。とは言え、月額利用料金を3700円にまで値上げするとはなかなかの強気です。高額と見られる2530円のWOWOWや2189円のU-NEXTをも上回ります。しかも、1年前の料金と比べると約1.5倍の値上げです。料金がアップする2月14日から同時にライトユーザー層狙いの低価格プランを用意することも発表したことから考えるに、戦略的な勝負に出たようです。

外資系の参入で競争が激化

それにしても、1月12日のDAZN値上げ強行突破に、16日のGYAO!撤退告知と、この数日違いの両社の発表はユーザーにとって悲報が続いたという印象は残ります。そもそもなぜ明暗が分かれてしまったのか。そんな疑問も生まれます。

大前提として、動画配信サービスが乱立しすぎたことが挙げられます。世界各国で同じようなことが起こっていますが、日本の状況は極めて競争が激しいと言われています。その最たる理由に、外資系サービスの参入があります。2015年にNetflixとAmazonプライム・ビデオが、2016年にアメリカの投資会社アクセス・インダストリーズ傘下にある今回話題のDAZNが、2019年初頭にはDisney+と、外資系が続々と日本市場に参入しました。

NetflixとDisney+は各国に参入していますから当然の動きですが、それぞれ日本はアジアの国の中でいち早く受け入れています。DAZNにおいても欧米を中心に展開するなか、今のところアジアでは日本のみです。またAmazonプライム・ビデオは韓国では利用できません。そういう意味では日本は門戸が広いのです。

それによって市場規模は2017年から2020年にかけて約2倍にも成長していきました。一方で、この頃から淘汰が進んで国産サービスが打撃を受けるシナリオが見え始めていたのです。

国産と外資系に分かれた構図があると単純には言い切れませんが、戦略上で明らかな違いがあります。何より欧米発のサービスは軒並みデジタルファースト戦略です。強力な高額予算の独占配信コンテンツを揃えることによってグローバル規模で成長させていった経緯があります。それが競争力に打ち勝つ手段であると言われていました。DAZNもしかりです。

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