「女王陛下の新路線」が変えるロンドンの商業地図 半年で7000万人利用、都心デパートに誘客効果
なんとか2022年中に本来の形での運行パターンに移行できたエリザベス線だが、運転本数はまだ当初計画の水準には達していない。コロナ禍で在宅勤務が一般的になる中、通勤という概念が徐々に薄れつつある。現状でも供給が需要を上回っており、本来の運転本数まで引き上げる計画を破棄する可能性さえあるのが現状だ。
ただ、ロンドン市内でほぼ並行する地下鉄セントラル線の混雑は明らかに解消した。時間帯によっては、ロンドンにしては珍しく「息もできないほどの混雑」があった路線だけに、バイパスとなる新線の開業は通勤通学客にとってずいぶん便利になった。ただ、日中のセントラル線は極端に乗客数が減っており、ロンドン交通局(TfL)の財政難もある中、路線を維持できるのかと心配になってしまうほどだ。
経済効果は6兆円以上?
エリザベス線の開通から半年が経った2022年11月下旬、これまでの経過について発表があった。TfLが発表したデータによると、ロンドン都心区間が開業した5月24日以降、7000万人近い人々がこの路線を利用したことが明らかになった。マーク・ハーパー運輸相は、「わずか半年という短い期間で、エリザベス線の利用者は6000万人を超えた。ロンドン市内だけでなく、より広い郊外を含めた地域全体の成長を牽引している」と、同線が生み出す経済効果に対し、改めて期待感を示した。
クロスレールプロジェクトでは、政府が90億ポンド(約1兆4107億円)以上を投資、すでに5万5000人以上の雇用を新たに創出、イギリス経済全体に420億ポンド(6兆5813億円)をもたらすと試算されている。ロンドンのサディク・カーン市長は「新しい鉄道路線がロンドンの知名度をさらに高めた」と述べてもいる。
エリザベス線沿線でもっとも市内の中心にあるトッテナム・コート・ロード駅は、開業以来乗降者が80%増加し、同線で最も利用者の多い駅となった。一方、5月の開業に間に合わず、10月24日に改めてのオープンとなったボンド・ストリート駅も利用者が25%も増加している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら