「女王陛下の新路線」が変えるロンドンの商業地図 半年で7000万人利用、都心デパートに誘客効果

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エリザベス線には複数の信号システムに対応できる新型車両「クラス345」が導入されている。一方で、リバプール・ストリート駅以東の区間には、車齢40年を超える旧型車両「クラス315」が新型車に交じっていまだ運用に入っている。ただ1980年代に製造された古い車両は、エリザベス線都心区間の新しい信号システムと互換性がない。

Elizabeth Line Class 345
エリザベス線が3分割されていた時期、リバプール・ストリート駅地上ホームに入った新型車両「クラス345」(筆者撮影)

クラス315はリバプール・ストリート駅(地上ホーム)とシェンフィールド間の在来線ルートを細々と走っているが、消滅も時間の問題だという。

TfLの計画によると、エリザベス線は2023年5月をメドに、1時間当たり最大24本が走る本来のダイヤに本数を引き上げる方針を固めている。クラス345の中には編成両数が短い列車が3本のみあるというが、これも早晩解決するとみられており、そうなると旧型のクラス315はいよいよ活躍の場を追われる公算が大きい。

エリザベス線の運行を担うMTRC(香港)傘下のオペレーター、MTRC(クロスレール)社のスタッフは、旧型車から最新鋭の車両に切り替わることについて「黒電話から一気に最新鋭のスマートフォンに替わったようなもの」とその劇的な変化について表現した。

鉄道の労使問題は続く

年末年始のロンドンは、コロナ禍により押さえつけられていた反動で、旅行需要が一気に回復したかのような大賑わいをみせた。一方で、鉄道運営の現場では依然として労使問題が解決せず、クリスマス休暇から1月中旬にかけてストライキが頻発している。エリザベス線もストのあおりで運休となった日もあり、せっかくの新路線が使えず呆然とする旅行者の姿も数多く見た。

英国の鉄道業界では、民営化で導入された「上下分離方式」の見直しをするべきかどうかで揺れている。移動需要が回復する中、利用者がトラブルなく列車に順調、確実に乗れる環境を1日も早く取り戻してほしい。

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さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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