ドミノピザ「注文殺到で大混乱」に抱く最大の懸念 過度な現場負担は企業イメージの悪化に繋がる
外食でいえば、牛丼チェーン「すき家」の労働環境も、再び話題になった。1月、ひとりで店舗運営をまかなう、いわゆる「ワンオペ(ワン・オペレーション)」の途中で、女性従業員が心筋梗塞を発症。3時間後に倒れているところを発見され、病院搬送後に死亡が確認された。
すき家は2014年にも、ワンオペによる過重労働が問題視されていた。同年中に深夜帯(0〜5時)のワンオペを廃止するも、朝帯(5〜9時)では継続。今回の事故を受けて、すき家は6月、朝帯についても複数勤務態勢にすると発表した。
「吉野家」のイメージダウンも起きた。3月には、マンガ作品とのコラボキャンペーンについて、賞品となる「お名前入りオリジナル丼」に入れられる名前の条件を「本名に限定する」と変更。対象者による問い合わせへの、吉野家側の対応も含めて、SNS上では非難が相次いだ。
そして4月、早稲田大学の社会人向け講座で、常務取締役企画本部長(当時)が、自社のマーケティング戦略を「生娘をシャブ漬け戦略」と説明して、こちらも物議を醸した。
「従業員を大切にしない企業」と思われる危険性
ここまで紹介してきた各チェーンは、各ジャンルのトップランナーだ。だからこそ、消費者から向けられる視線はするどく、ひとたび慢心がチラつくと、一気に見透かされてしまう。
ドミノ・ピザの過去の例でいえば、テレビ放映やサッカー観戦を理由に挙げていたが、うがった見方をすると「他人のせいにしている」と思われかねない。
そして、一番重要なのは、いざというときに矢面に立たされ、尻拭いを強いられる従業員を、いかに守れるかだ。吉野家では「シャブ漬け」発言の余波で、復活に向けて約10年かけて開発された「親子丼」のプロモーション自粛を余儀なくされた。結果として、発売からわずか2カ月余りで、親子丼はメニューから姿を消すことに。騒動による風評が、直接の終売理由でないとしても、要因のひとつにはなっていたのではないか。
ドミノ・ピザについてもそうだ。もし今年のような注文殺到による混乱が起きれば、現場で働く人に乗りかかる肉体的、精神的な負担は大きくなる。その結果、企業に対しても「従業員に優しくない会社」という見方がなされる可能性だってある。
もしそんなイメージが定着すれば、解消するのに長い年月がかかるのは言うまでもないが、ネットユーザーの民意というのは往々にして、このような事例の積み重ねで形成されていくものなのだ。
現状では、いずれの事例も、SNS上では従業員を気づかう声が相次いでおり、これは救いと言えるだろう。消費者との接点となる店員はもちろん、商品開発や広報チームといった本部社員も、上層部の一挙手一投足に踊らされる。さきほど消費者の視線が鋭いと書いたが、裏を返すと「行き届いた従業員への配慮」にも気付きやすいということ。そのあたりに、イメージ向上のカギがあるのではないかと、筆者は期待を抱いている。
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