不動産不況の到来が国民生活を圧迫するという矛盾 習氏の「共同富裕」運動も住宅は依然として割高
中国ハイテク産業の中心地、広東省深圳市に住む教師の銭さんのように、持ち家が欲しいと願う人々は国の住宅政策から何の恩恵にもあずかっていない。政府は住宅価格の高騰に歯止めをかけようと不動産セクターに対する規制を強化した。
銭さんは住宅購入資金を蓄えるため、9年前から寮でルームシェアをしている。最近の相場変調で住宅は約10%安くなったが、彼女の給料もまた9%減らされた。実際に住宅を買えるようになるには、あと何十年も貯金を続けなければならない。「深圳に来たとき、住宅価格に驚いた。政策が大きく変わったけど何の希望もない」と話す。
31歳の銭さんはデリケートな問題だとしてフルネームを明かさずに取材に応じた。「定年まで寮暮らしかもしれないと考えると怖くなる」と言う。
中国当局による住宅バブル退治は異例の厳しさで、不動産開発会社に課した借り入れ規制は金融リスク低減という目標をおおむね達成した。直撃を受けたのが過度な債務に依存していた企業で、その代表格がデフォルト(債務不履行)に陥った中国恒大集団だ。
習近平国家主席が推し進める「共同富裕」(共に豊かになる)運動は、手頃な住宅価格という概念を中核に据えている。社債保有者や不動産会社が被った痛みにもかかわらず、一般国民にとって住宅は依然として割高で、政策の有効性に疑問を呈する住宅の買い手もいる。