岸田首相「秋葉氏、杉田氏更迭」もさらに危機続く訳 止まらぬ「辞任ドミノ」、閣僚辞任はすでに4人目

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岸田首相が年明け以降の政権運営で最大かつ最優先の目標としているのは、次期通常国会での来年度当初予算の早期成立だ。そのためにも、「国会混乱の原因となる秋葉、杉田両氏の更迭が危機回避の大前提」(自民幹部)となっていた。

さらに、「仮に大幅改造を断行しても、新任閣僚らに新たな疑惑が発覚したら、もはや政権維持は困難」(首相経験者)とされるため、「岸田首相は自らの選択肢を狭めた格好」(同)だとの指摘もある。

菅義偉前首相とともに自民党内反岸田勢力の旗頭とされる二階俊博元幹事長は、秋葉氏更迭などの人事情報が飛び交う中、民放CS番組で「内閣改造も思い切った人材の登用とか、派閥にとらわれないとか、目新しいことをやってのければいいが、従来どおりの派閥順送りのようなことをやったら国民はちゃんと見抜く」と言い放った。

ただ、この二階発言も「優柔不断な岸田首相が決断できないことを見越しての揺さぶり」(自民長老)との見方が多い。まさに、「党内の権力闘争での主導権争い」(同)というわけで、ここにきて二階氏が「これ見よがしに菅氏と会談を繰り返しているのもその証左」(岸田派幹部)とされる。

岸田首相の統率力欠如で萩生田氏は解散権に言及

そうした状況を見透かしたように、党中枢の一角を担う萩生田光一政調会長は人事直前の25日のテレビ番組で、防衛費確保のための増税に関し「決めるのであれば、国民に信を問うことはお約束しなければならない」と述べ、首相の専権事項の「解散権」にまで言及した。 

さらに、秋葉氏の後任人事をめぐっても、直前に「伊藤達也元金融担当相に内定」との情報が流れ、各メディアが報道したが、自民内の異論で再調整する事態となった。党内では「すべては首相の統率力欠如が原因」(閣僚経験者)との見方が支配的だ。

こうした迷走ぶりに野党側は「内閣改造してから(閣僚更迭は)4人目。仏の顔も三度というが、岸田首相の責任が問われる。本来なら総辞職しないといけないような話だ」(立憲民主・安住淳国対委員長)、「更迭は当然だが、首相には、任命した責任とともに、問題が噴出していながらずるずる続けさせた二重の責任が問われる」(小池晃・共産党委書記局長)と猛批判。次期通常国会での政権追及に勢いづいている。

来春の統一地方選を控え、通常国会では「防衛増税」や「原発推進」など国民から批判を招いている重要課題をめぐる激しい与野党論戦が想定される。それだけに、「岸田首相が国民も理解できる『説明能力』と『決断力』を発揮しない限り、政権危機の脱出は不可能」(自民長老)という声が広がるばかりだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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