浜松「ガーベラ日本一」率いる脱サラ会社員の嗅覚 ここ20年で一人当たり出荷額は175%に

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浜松市役所を市政100年の記念で飾ったことも(写真提供:浜松PCガーベラ)

浜松PCガーベラは、その後自ら試行錯誤しながらガーベラのプロモーションに乗り出した。コンサルなどは使わない。会場設営にいたるまで、徹頭徹尾自らが主体となって、大小さまざまなイベントを企画・実行していったのだ。

結婚式の披露宴会場をガーベラの花だけで埋め尽くす「ガーベラ結婚式」はホテルとのコラボ、開業する新店舗をガーベラで飾るのは地元企業とのコラボ、社会人スポーツチームとのコラボなどなど。農作物ではちょっと考えられない事例を積み重ねていき、いつしかガーベラは浜松市のPRイベントには欠かせない存在となった。

安くて尖ったプロモーションを追求

プロモーション費用は、基本的に自分たちの利益を削って捻出するしかない。当然、金ではなく知恵で解決しなければならないことばかりになってしまう。ここにも浜松PCガーベラならではの工夫があった。

カタログのデザインは地元大学の学生さんに委託するなど地元と積極的に連携している(写真提供:浜松PCガーベラ)

たとえば毎年作成しているカタログのデザインは、静岡文化芸術大学デザイン学部デザイン学科の学生に委託していたり、表紙に使う写真は市内の高校写真部に持ち回りで撮ってもらっていたりしているのだ。

現部会長の藤野行宏さんはこう語る。

「うちでは花育活動は当たり前のこととして、ずっと前からやってきています。そこで花育から一歩進んで、地元での社会貢献活動として新しいことをやってみようと考えました。学生さんたちの成果が社会に見える場を提供してあげようと。プロのデザイナーやカメラマンは、使いたくても使えないっていう理由もありましたけど」

地元の子供たちへの「花育」も地道に行ってきた(写真提供:浜松PCガーベラ)

「ガーベラは特に若い女性に人気がある花だしね。消費者の気持ちがよくわかる人の感性と創造性を生かしたくって。それに女子大生やJKとの接点も広げられますし」(鈴木さん)

「商工会議所経由で販促用のガーベラを地元企業に提供したりもしていますが、まだまだ落差が大きいというのが現実です。一番目立つ受付にガーベラを飾ってくれる会社もあれば、お客さんからは見えない場所に寂しく飾られていたりで。何のための無償提供なのかって感じてしまうことも、正直あります」(藤野さん)

タンポポがゴージャスになったような姿のガーベラは、一本の茎の先端に花が一輪咲く。葉はついていないため、一輪挿しでも収まりがよい。これほど飾りやすい切花は他にないと思うのだが、花の楽しみ方を知らない生活者が多いという証拠なのだろう。

だからこそ浜松PCガーベラは、ガーベラが先頭を切ることで、花全体の消費拡大まで実現してしまおうとしているようにも見える。

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