ヤングケアラーと名乗らない20代息子の複雑心中 母親が病に倒れたとき中1だった息子の現在

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母と祖母の介護を全力で担っていながらヤングケアラーと名乗ることに違和感を感じる20代男性。その心の中とは?(写真はイメージです。写真:mits / PIXTA)
「ヤングケアラー」とは、何らかの困難を抱えた家族を心配し気づかい、そこから逃れることができない子どもたちのこと。
大阪・西成地区をはじめ、子育てや看護の現場でのフィールドワークで知られる大阪大学教授の村上靖彦さん(専門は現象学)は、そのように考えていると言います。
身体的な介護や家事労働に時間を取られ、学校に通えない子どもといったイメージが固定化しがちですが、実際には、「目で見てわかる介護・家事」をしていないヤングケラーもいます。
村上さんは、こうした社会一般のイメージと現実との乖離を危惧し、ヤングケアラー経験者へのインタビューを重ねてきました。そして、その「語り」を丁寧に分析し、当事者が抱える困難の本質、その多様さを掘り下げています。
ここでは、新刊『「ヤングケアラー」とは誰か 家族を“気づかう”子どもたちの孤立』から一部抜粋・改変。中学生の頃から現在に至ってもなお、くも膜下出血の後遺症で寝たきりの母親と認知症が進んだ祖母の介護を続ける20代のけいたさんのケースを、前編記事に続いて紹介します。
けいたさんが中学に上がってすぐの4月に、母親はくも膜下出血で倒れました。以降、けいたさんは、「ずっと一緒におったのに気づかれへんかった」という申し訳なさを抱えながら、母親のケアに邁進してきました。

母親が倒れたときのショックは…

倒れたときのショックが現在にまで結びつく様子は、さらに何度か語られた。

けいたさん:最初は仕事、バイトしだすってなったときも、昼間の仕事したほうがいいんかとか、言うたら「夜勤からの仕事したほうがいいんか」っていうのもお姉ちゃんと相談して。やっぱり誰かがつねに家におる状態じゃないと、誰もおらん状態でなんかあったときっていうのが、家族全員が心配してて。だから『もし誰もおらんときに、もしけいれんを起こして、そのまま亡くなったらどうしよう』ってなって。
そういうのを考えると、自分のしたいこと(※注1)が制限されるじゃないですけど、やっぱり何をしてても、そういうのが頭から離れないっていうか。例えば僕が遊びに行ってて、ご飯食べに行っててとかしてるときに、そういうけいれんしてとか、なんかで倒れて「救急車運ばれました」って聞くと(※注2)、『俺がこんなんしてたからや。もっと、それやったら家におったらよかった』っていう後悔が、やっぱり絶対あるんで。っていうのは。〔中略、以下「……」で示す〕やっぱりもやもやがずっとあるんで。
村上:もやもや。
けいたさん:そうです。『どうしよう。なんかあったらどうしよう』っていうのをつねに頭で考えないと、いざこうなった、「倒れました」ってなったときに、自分のなかの気持ちの整理がやっぱり追い付かないんで、つねに考えてる状態っていう。
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