「キラキラ広報は幻想」つらすぎる海外出張の現実 恐怖で電話の受話器が上げられなくなることも

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私は外資系企業の広報を何社か経験していますが、海外の展示会での発表に合わせて現地に行くことがあります。華やかな印象を持たれるのは、たぶんこういうのがいけないのだと思うのですが、実態は次の通りです。

十数時間エコノミークラスでほとんど一睡もできないまま現地入りし、すぐにホテルに入ってプレスリリースや新製品のスペック表、広報画像データなどの準備をします。その間に現地取材するマスコミの方に連絡もします。冷房の利き過ぎるホテルの部屋から一歩も出ることなく、冷え切ったサンドイッチをかじりながら黙々とこれらの作業をこなし、睡魔に襲われうとうとしているところに日本国内の関係部門からの電話でたたき起こされ、ほぼ間違いなく徹夜のまま発表会に突入します。

何とか発表会が終わると、今度はそこから問い合わせの電話が携帯にバンバン入ることになります(このあたりで資料に間違いがあったことが発覚し、へこみます)。ここまで成田を出てから時差のある中、ほぼ不眠不休で、辛うじて一休み入れられたかと思うと今度はリポートの催促……というのが私にとっての広報の海外出張です。

テレビの取材に広報が答えるべきか

もう一つ、広報に華があると誤解されがちなのがテレビ取材でしょう。確かに、場合によっては撮影のお約束事(編集点といわれる間をつくってしゃべるなど)を心得た広報担当が、カメラの前に立ってコメントするのが正解のときもあります。しかし、個人的には広報がカメラの前に立つのはあまり好ましいとは思っていません。

取材する側からすると、広報のコメントはどうしても会社として「あらかじめ用意されたコメント」になるので、製品を開発した技術者やGOサインを出した経営者の生の声ではなくなります。なるべく生々しいものを使いたいという取材側のニーズを考えると、少々しゃべりが不慣れでテレビ映えがいまひとつでも、製品担当者に直接カメラの前に立ってもらうことが良い取材になります。

相撲の勝利者インタビューなどがいい例でしょう。あの、ふうふう肩で息をして、何を言っているのかよくわからない力士のコメントだから視聴者に伝わるのであって、広報がすらすらと流れるようにコメントしても、ちっとも面白くありませんね。

社員のテレビ映えよりも広報がもっと真剣に取り組むべきは、取材設定までの準備の段階です。特にこちらから取材を打診するのは、かなり地味でかつしんどい作業です。

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