フィリピンの謎「モノづくり苦手」でも急成長の訳 マルコス政権下では「輸出主導型の工業化」に失敗

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50代以上の一般の日本人には、フィリピンといえば「治安が悪い国」という印象を抱く人が多い。さらに、最盛期年間8万人が日本に来ていたエンターテイナーの影響もあって、とくに日本人女性には国としてあまりいい印象を与えていなかった。

しかし、最近の日本の大学生らに聞くと、フィリピンと聞いてまず浮かぶイメージは「短期留学の国」となっているそうだ。就職活動前を中心に「TOEICの点数を上げたい」「日常的な英会話ぐらいはできるようになりたい」という動機でフィリピンを訪れる日本の大学生は急増している。

英語留学といえば、かつては本場のアメリカやオーストラリアが多かったが、フィリピンの場合はそれらの国よりも大幅に安く、渡航費別で1カ月15万~20万円ほどで受け入れてくれる寮付きの学校もある。

マン・ツー・マンで1日8時間みっちり

さらにアメリカやオーストラリアに留学した場合と違って、フィリピンの英語学校の売り物はマン・ツー・マン指導だ。それも土、日を除いて1日8時間、教師のフィリピン人と1対1でみっちりやる。

マン・ツー・マンとなると、ものおじする余裕もなく、いくら英会話が下手な日本人であっても、1日8時間、英語をしゃべり続けることを求められる。このため1カ月もいれば、たいていの日本人が基礎的な英会話ぐらいはできるようになるのだ。しかも、フィリピン人教師の多くは公立学校などで英語教師をしていたプロだ。フィリピンでは教師の初任給が日本円で4万円程度と安いため、英語学校がそれよりいい条件で募集すると、プロの英語教師はいくらでも集まる。

日本の英会話学校で教えるアメリカ人教師らの場合、本国で英語教師をやっていたというプロは数少ない印象があるが、フィリピンの英語学校は違う。おそらく日本の一般的な英会話教室に1年通うよりも、教員資格を持つプロがマン・ツー・マンで教えてくれるフィリピンで1カ月間、集中して英語を習うほうがはるかに身につくはずだ。

フィリピンに英語の短期留学としてやって来るのは学生だけでなく、経費は会社負担で来る中小企業の社員ら社会人も少なくない。そういった中小企業は、生産拠点を海外に移さざるを得なくなったが、社内に高い英語力を持つ人材がいないといった事情を抱えている場合が多い。日本人だけでなく、韓国人、中国人も数多く英語を学びにフィリピンにやって来る。

さらに、フィリピン人教師が日本など海外に住む外国人を対象にやはりマン・ツー・マンで英語を教える形式の学校も増えている。中には日本の学習塾と提携している会社もある。このため英語学校が集中するセブなどでは英語教師不足という問題も起きているが、これは看護師などに比べると、人材の補充はしやすい。

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