フィリピンの謎「モノづくり苦手」でも急成長の訳 マルコス政権下では「輸出主導型の工業化」に失敗
マニラ空港の荷物の受け取りカウンターで短期留学の日本人男子学生と話をしたことがある。
20歳だったその学生は「クラーク(ルソン島中部)の英語学校に入るために来ました。海外に来るのは生まれて初めてです」と初々しく言った。フィリピンについての印象を聞くと「悪いイメージはありません。むしろ海がきれいな観光地といういいイメージを持っています」。ただ「両親からは『フィリピンは危ないところなんじゃないか』と反対されました」とのことだった。
一昔前までは、若い学生がフィリピンに来る例は非常にまれで、東京外語大や大阪大のフィリピン語専攻の学生がフィリピン大に留学に来るぐらいしか例はなかったが、今や短期留学生は日本人旅行者のかなりの部分を占めるに至っている。
急成長する観光業
ビジネス・プロセス・アウトソーシング、英語学校ともサービス業だ。今やサービス業がフィリピンの経済成長を支える時代になった。さらに急激に成長しているサービス業に観光業がある。
新型コロナの流行前の2019年にフィリピンを訪れた外国人観光客は政府目標の820万人を上回る826万人を記録、716万人だった2018年と比べて15.24%増になった。
国・地域別の2019年の旅行者はトップの韓国が198万人(前年比22・48%増)で、過去10年連続で首位を保った。2位の中国は174万人(38.58%増)で伸び率は韓国を上回った。3位のアメリカは106万人(2.90%増)、4位の日本は68万人(8.07%増)、5位の台湾は33万人(35.01%増)だった。
フィリピン政府は観光業を「持続可能な包括的経済活動」と位置付け、最大の観光資産である海の環境保全に対する意識を高めており、ドゥテルテによる2018年のボラカイ島閉鎖はその一環だった。
2019年時点で、観光による収入や雇用への経済効果などから算出した観光直接粗付加価値(TDGVA)が国内総生産(GDP)に占める割合は12%に至っている。
まだまだ成長が予想されていた観光業は、2020年からのコロナ禍で壊滅状態になったが、今後はまた、急成長の軌道に戻ると思われる。というのも、以前、ボラカイ島などの観光地を訪れるのは、もっぱら外国人だったが、近年は厚みを増したフィリピンの中間層が訪れる場所となりつつあるためだ。
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