フィリピンの謎「モノづくり苦手」でも急成長の訳 マルコス政権下では「輸出主導型の工業化」に失敗

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フィリピンの首都マニラの風景 (写真:HIT1912/PIXTA)
コールセンターなどのビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)が代表的な産業であるフィリピン。近年は英語学校産業も急成長している。一方で、工業に目を向けると「競争力は近隣諸国より劣っているといわざるをえない」と、フィリピンに詳しいジャーナリストの石山永一郎氏は言います。
なぜフィリピンはサービス業に強く、「モノづくり」に弱いのか。新著『ドゥテルテ 強権大統領はいかに国を変えたか』を上梓したの石山氏が解説します

フィリピンの代表的な産業は「BPO」

ノイノイ・アキノ、ドゥテルテ両政権下での経済高成長の要因には、マルコス政権が失敗した「輸出主導型の工業化」よりもサービス産業に特化した産業の育成、外国投資の誘致を進めたことも奏功したように思える。

外国資本を得て進められているフィリピンの代表的な産業はビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)業だ。具体的な業態としてはコールセンターが多く、フィリピン各地にある。

さまざまな方法で、国際回線をつなぐことにコストがかからなくなった現在、苦情対応など問い合わせに応じるコールセンターをアウトソーシング(外注)してくる国はアメリカなど英語圏の国が多い。アメリカ企業だけでフィリピンに進出しているBPO企業の7割を占めるとされている。

大卒以上のフィリピン人は多くが流ちょうに英語を話すし、人当たりもいいので、アジアの中でもコールセンターの職員には向いている国民性がその背景にはある。

英語で対応するコールセンターは、インドにも多いが、業界関係者は「インド人よりもフィリピン人のほうが、なまりが少なく、世界標準に近い英語を話す」と評価する。

フィリピン人の英語力が注目され、ビジネス・プロセス・アウトソーシング業とともに急成長しているのは英語学校産業だ。中部セブ州がその中心だが、最近はルソン島中部のクラーク経済特区、避暑地バギオなどに短期留学を中心とした外国人用の英語学校が続々と誕生している。

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