フィリピンの謎「モノづくり苦手」でも急成長の訳 マルコス政権下では「輸出主導型の工業化」に失敗

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これはフィリピンの歴史を振り返ったとき、原始共産制的な社会からスペインとアメリカの植民地となり、一度もフィリピン群島全体を支配する民族的中央集権国家を持ったことがないことと関係しているようにも思う。

フィリピンは植民地から戦後に「いきなり」民主主義国家として独立した。民主主義国家を形成するまで封建制を経験したことがない国だ。

封建制といえば、日本では過去の悪しき政体として否定的な文脈で語られることが多いが、封建制下ではそれが非人道性を持つものであっても、法を通じて規律が人々に浸透し、罪と罰が定められた。多くの先進国は長い封建制の時代を経て市民革命が起こり、現在の民主主義に至っている。

また、封建制下では官僚が育成される。さらに丁稚奉公から始まる職人を育てる。日本のモノづくりの伝統も、長い封建制の時代に培われ、鎖国下の江戸時代に独特な発展をしたといえる。

業務の正確さや時間厳守などに問題

社会学者のマックス・ウェーバーは著書「官僚制」の中で、官僚制における意思決定の遅さなどの問題を指摘しつつ「官僚はそれぞれ固有の専門能力を持つ」「業務は正確さ、書類の知識、慎重さ、統一、厳格な上下関係、そして、あつれきの排除のもとに遂行される」ことを挙げ、官僚制の効能についても冷静に分析している。

フィリピンはそういった官僚制や封建制の長い歴史を独立までに経験していない。それは、封建制下での抑圧を経験しなかったという点ではよかったともいえるが、フィリピン人の働きぶりを見ていると、業務の正確さ、時間厳守などに問題があると感じることは多い。

現在も王国として存在するタイ、かつて王国があったベトナムやミャンマーなど他の東南アジア諸国と比べると、フィリピン料理は、その味付けやバラエティにおいて評価が低い。理由は「職人不在」とも関わりがありそうだ。

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