孤独がツラい人と何とかやっていく人を分ける差 社会課題にしないと個人問題としてやり過ごされる

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そうなると、結局のところ「関係の質」は、「感情資本」次第で決まるといっても過言ではない。かつてのように近所の世話役が本人の人となりを代弁してくれたような時代は過ぎ去り、自発的に「感情資本」を強化し、効果的にアピールすることが求められているともいえる。

老後のおひとりさまを支えるユル友

累計100万部を超える『おひとりさまの老後』シリーズで知られる社会学者の上野千鶴子は、一時期おひとりさまの代名詞にまでなっていたこともあり、孤独を推奨しているように誤解している人も少なくないが、「老後のおひとりさまを支えてくれるのは、『このひとイノチ』という運命的な関係よりは、日々の暮らしを豊かにしてくれるゆるやかな友人のネットワーク」と主張している(『男おひとりさま道』文春文庫)。

「『家族持ち』から『家族』を引き算すればどうなるか。あとになにも残らなければ、『人持ち』とは呼ばない」と書いているように、家族がいることでむしろ人間関係を狭めてしまうことがリスクだと認識しているからだ。「内面の共有などなくてもつながれるのがユル友。毎日を機嫌よく生きていくことを支えてくれる仲間がいればじゅうぶん」とアドバイスする一方で、「友人づくりは、家族づくりより、もっとむずかしいかもしれない」とも述べている(同上)。換言すれば、「関係の質」がおひとりさまの「人生の質」(quality of life)の必須条件ということである。

もう1つ興味深い例は、お笑いタレントでYouTuberのヒロシだ。一時期メディアでは彼女も友達もゼロという発言ばかり強調されていたが、『ひとりで生きていく』(廣済堂出版)には、「僕はソロキャンプをする者同士で集う『焚火会』に参加している」という記述がある。「ソロキャンプをやることが好きだという共通の趣味と話題」でつながっている「ゆるい関係」だという。

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