NHKの「若者向け番組」が若者には刺さらない皮肉 受信料を「強制サブスク」と感じる若者たち

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ではNHKの制作プロセスはどうか? ABEMAとはまるで逆といっていい。まず決定権者が圧倒的に高齢だ。トップは70代。チーフプロデューサーは50代。実働部隊のプロデューサーの主力は40代で、たまに30代の若いプロデューサーがいても、高齢の上司たちが次々に口を挟み、自由にさせてくれないだろう。

企画は、高年齢の上司たちが決定する。「若者向けの番組もやっている」とアピールできる企画を高齢者が選ぶので、必然的に「意識高め」の番組が増え、「若者たちの政治参画意識はいま」とか「国際社会の中でいま日本の若者は」みたいな、説教くさくて難しそうなテーマの番組ばかりになる。

タレント出演料は民放より安い

結果、若者番組の体ではあるものの実際の視聴者は高齢者がほとんどで、「そうか今の若者はこうなのだな」と「高齢者が若者をわかったような気になる番組ばかり」という皮肉な事態になるのだ。

これではたしてNHKはウェブコンテンツ業界にとって脅威となりうるのか? 私はそれは「やり方次第」だと思っている。まず、ニュース制作力に関していえば、NHKほど取材網を持つ報道機関はない。NHKが全力で制作すれば、ウェブ最強となることも可能だろう。

しかし問題は娯楽番組だ。若者に受け入れられる面白いバラエティー番組を制作するのは、今のままでは難しい。ただし、タレントの出演料に関してNHKは民放に比べて驚くほど安い。特別な価格で出演してもらえるメリットがあり、「豪華な出演者をふんだんに使ったウェブ番組」を制作できる可能性がある。

しかしながら現状では、ウェブコンテンツ業界にとって民業圧迫にはならない。つまり、たいしたことがないのである。

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