NHKの「若者向け番組」が若者には刺さらない皮肉 受信料を「強制サブスク」と感じる若者たち

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若者はNHKに違和感を持っていると思う。いちばんの理由はNHKが「強制サブスク」であることだ。音楽も動画もゲームもサブスクが当たり前になっている若年層にとって、見たくなるような面白い番組がないのに、強制的に受信料を徴収されるNHKは、「やめたくてもやめられない」理不尽な強制サブスクで、文句が言いたくなって当然だ。

ABEMAが成功した最大の理由は「ウェブでテレビをやろうとした」からだ。ABEMA立ち上げ当時、私たちテレビ朝日のスタッフは「ウェブっぽいコンテンツ」を目指そうとして藤田社長に一蹴された。「玉石混淆のウェブだからこそ、高品質なテレビクオリティーが受け入れられる」というのが藤田氏の考えだ。「若者が自由に作ったテレビ」だからABEMAは若者に見られるのだ。

NHKのベクトルは、ABEMAとは真逆のようだ。「若者はこんな感じだろう」という高齢者の発想に基づいた番組を、ウェブっぽく制作して若者に受け入れられるか? 間違いなく失敗する、と私は思う。

テレビのような大ヒットを望むのは間違い

むしろNHKの強みを再確認すべきだ。民放が視聴率にこだわり、若者や女性向け番組を制作するのに懸命なのは、広告主の意向があるからで、若者向け・女性向けCMの需要が高いからだ。

本来NHKが視聴率を気にする必要はまったくないのに、なぜ異常なほど気にするのか謎だ。しかも次第にウェブで動画を見るのは若者ばかりではなくなっている。であれば、本来NHKが目指すべきは、若者に媚びず幅広い視聴者層に受け入れられる番組づくりだろう。大みそかの紅白歌合戦がなぜ最近不評なのか、ということと問題の根は同じなのではないか。

あと、テレビマンたちは誤解しがちであるが、ウェブの世界で「テレビのような大ヒット」を望むのは間違いだ。世の中全員に刺さる番組は現代社会にはない。多様なコンテンツをそろえ、「多様なユーザーに深く刺さることを目指す」べきだ。

NHKもこれまでに積み重ねてきたノウハウと強みを生かして、NHKらしいコンテンツを作り続けるべきで、それが最も賢明な選択肢なのではないかと思う。

鎮目 博道 テレビプロデューサー、顔ハメパネル愛好家、江戸川大学非常勤講師

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しずめ ひろみち / Hiromichi Shizume

1992年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなど海外取材を多く手がける。またAbemaTVの立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルのメディアとしての可能性をライフワークとして研究する。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社・2月22日発売)

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