緩和修正で崩壊「インデックス投資最強説」の死角 「みんなが買っているから」に潜む落とし穴
「貯蓄から投資へ」が国策として推し進められる中、特定の株価指数などに連動するインデックス型投資信託への長期・分散・積立投資は、ほとんど社会的なコンセンサスになりつつある。
筆者も、国・地域を問わず分散投資するインデックス投信を毎月少額ずつ積立購入しているインデックス派の1人だ。が、ここまで世の中がインデックス一色に近づいていくと少し不気味というか、本当に死角はないのか疑ってみたくなる。今回は「インデックス投資最強説」に異議を唱える、CGPパートナーズ株式会社の香月太郎チーフストラテジストに、ブームに潜む弱点を聞いてみた。
インデックス投資の自己矛盾?
――インデックス投資のどこに死角があるのか。
香月:そもそもインデックス投資は自己矛盾を抱えている。たしかに仮にインデックス投資家が存在しない世界が存在すれば、そこではインデックス投資が最も効率的な投資手法といえるかもしれない。しかし、インデックス投信の購入を実践するプレイヤーが増えるほど、実はインデックス投資の効率性は低下する
多くのインデックス投信は、単純に市場に出回る企業銘柄の時価総額の大きいものをより多く買う、証券投資理論でいう『時価総額加重平均』の考えに基づいて投資、運用する。だが、その理論は市場参加者全員が、割高な銘柄を売り、割安な銘柄を買うという経済合理的な動きをすることを前提としている。
インデックス投資家が増えると、時価総額の大きい銘柄は多く買われることで割高となり、時価総額の小さい銘柄はあまり買われず割安なままとなることで二極化が進み、マーケットの歪みが加速度的に増大してしまう。
――マーケットに歪みが生じたとしても、結果的にリターンが増えればよいと考える投資家も多いはず。彼らに実利的な問題は生じるのか。
香月:残念ながら、市場の歪みはいずれ修正されるタイミングが来る。2021年までは、FRBをはじめとする中央銀行が市中のマネーを増やす政策を続けたため、あらゆる銘柄について上昇の基調が続いた。こうした株価上昇局面では、費用の安いインデックス投信が、銘柄選びのリサーチにお金と手間をかけるアクティブ投信よりも良いパフォーマンスを残す傾向があり、インデックス投資最強説が勢いづく一因となった
だが、昨2022年からは各国が金融引き締めに移行した。日本銀行も昨年12月にそれまでの金融緩和姿勢を修正し、実質利上げを行った。今後は市中のマネーが減少する中で、投資家はより慎重に銘柄選びを行うことになる。
インデックス投信が多く保有している割高な銘柄は敬遠され、割安に放置されてきた銘柄に資金が向かう。そうなるとこれまでとは反対に、アクティブ投資に対するインデックス投資の優位性が弱まる
無料会員登録はこちら
ログインはこちら