不機嫌な人が周囲にまき散らす「フキハラ」の正体 家庭内でも深刻、脳波研究でわかったメカニズム

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他人の不機嫌は私たちの脳にどれくらいのダメージを与えるのでしょうか?

データ1は、ある人のストレスがまわりのひとにどれくらいの影響を与えるかを調べたものです。クレーム電話をしている人のそばに座った人の脳波を測定し、「ストレス度」を測定した結果です。

他人へのクレームでもストレスはたまる

(外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

一見しただけで、「ストレス度」を示す脳波が強く出ていることがわかります。クレーム自体は電話の向こうの相手に向けられているのにもかかわらずです。クレームを訴えている人の「不機嫌ノーラ」が移ったといえるでしょう。

実験を始めて15分後、「不機嫌ノーラ」から物理的に距離を取るために被験者には別室に移ってもらったのですが、ストレス度がおさまることはありませんでした。一度抱くとなかなか払しょくできないという「ネガティブな感情」のしつこさが見て取れます。

フキハラ被害の理不尽な実態

データ2は、頼んでいた荷物が届かないことにイライラしている学生Iとたまたまその場に居合わせた学生Jの「ストレス度」を示す脳波です。

フキハラは被害者ばかりが損をする

測定開始早々から学生Iの不機嫌が学生Jに移っていることは明らかです。「フキハラ」が起こっています。

注目すべきは5分ほどたったあたり。学生Iの「ストレス度」が徐々におさまっていきます。実は、間違った部屋に届けられていた荷物がIのもとに届いたのが3分後。つまり、待っていた荷物が無事届いたことで、Iのストレスは解消されたのです。

ところが、Iの不機嫌に巻き込まれたJのストレス度はいっこうにおさまりません。「不機嫌ノーラ」の発信者の機嫌が直ったにもかわわらず、「フキハラ」被害者の感情はネガティブなままなのです。理不尽な状況が生じているのです!

なぜ、「フキハラ」被害者のほうが「ネガティブな感情」を引きずるのか?

その理由については、現状、想像するしかないのですが、被害者はいわば「もらい事故」のような形でストレスを受けているぶん、自分のストレスに気づきにくく、そのせいで、ストレスを解消するための行動を起こしにくい、ということがあるかもしれません。

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