東京23区タクシー運賃「15年ぶり」値上げの実態 初乗り420円→500円、運転手採用増に期待も

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利用者の決済手段の幅が広がり、利便性が向上する一方、タクシー会社にはクレジット会社に支払う手数料負担が重くのしかかる。

国際自動車の松本良一常務取締役は、「自社タクシーの営業収入に占めるキャッシュレス決済の割合は7割くらい。手数料が3%だと、7割の3%なので営業収入が約2%も純減することになる」と話す。改定前の運賃ではその手数料負担を賄えきれなかったという。

タクシー運賃の案内
東京都内のタクシー乗り場では、新しい運賃が掲示されていた(撮影:尾形文繁)

運賃の値上げによって、コスト高騰分の補填や乗務員の待遇改善が期待される一方、利用者の乗り控えが懸念される。日本交通では、運賃改定から1カ月が経過した現時点では乗り控えは見られないという。

担当者は「12月は1年の中で最繁忙期なので、利用者の減少が目立っていないのかもしれない。影響が出てくるのは1月から2月にかけてだろう」と話す。

全国で相次ぐ運賃改定

タクシー業界では、47都道府県を100の運賃ブロックに細分化し、各ブロックにおける適正な運賃を国土交通省が定める。

2022年に入ってからは4月に奈良県(奈良県地区)、9月に新潟県A地区(新潟交通圏)と福岡県(北九州市・中間市・遠賀郡)、12月に愛知県(名古屋地区)などで運賃改定を相次いで実施。

他のブロックでも運賃改定要請の提出が続く。さまざまな物品の価格が上昇する中で消費者の値上げに対する抵抗感が薄れてきており、運賃改定のタイミングとしては「今がチャンスだ」と業界関係者は語る。

3大都市圏の東京や名古屋の運賃改定に続く形で、大阪府(大阪地区)でも11月10日に運賃改定要請が提出された。国土交通省近畿運輸局は2023年2月10日までの3カ月間を運賃改定の受付期間に設定した。

期間内にブロック内の法人全車両数の7割を超える申請があった場合、行政は運賃改定が必要かどうかの判定や上限運賃を決める手続きに進むことになる。

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