高山登山者は「脳の腫れ」に注意すべき医学的理由 命を脅かす「高地脳浮腫」を発症することも

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人間は、おおざっぱに言うと二次元の生活を地上で送っていて、昔からずっと上の領域は到達不可能で手の届かない謎の領域だった。飛ぶことは技術的に不可能だったし、山は高度のために身体的ストレスを与えた。

その危険性ゆえに山は不吉な土地とみなされるようになったが、同時に魔力を秘めた場所でもあった。教会の丸天井ですら、その高さだけで、礼拝者たちに超自然的な力を前にしているような感覚を与えることができる。しかも奇妙なことに、われわれの頭蓋の天井を連想させる。その下には脳が、精神的な器官が鎮座しているのだ。

脳が果たしている、謎めいた見晴台の役目

はるか昔から、人は意識の本質について考えをめぐらせてきて、それについて説明しようとする哲学や理論が無数に存在している。私には、精神は相互関連性から生じているように思える。脳はニューロンから構成され、そうした細胞と細胞のつながりが、脳機能の基本的な単位になっている。

『未知なる人体への旅 自然界と体の不思議な関係』(NHK出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

より高い位置から眺めると、関連するニューロン同士が寄り集まって、それぞれ独自の機能を持ち、脳の地理的領域を形成していることがわかるだろう。そうしたいくつもの領域での相互作用を通じて、個人の意識が作られる――各領域でのやりとりから、全体が生まれるのだ。

さらに高い地点から鳥瞰すると、ふたりの人間の会話、すなわち、2つの脳のあいだの言語的なかかわりによって、精神の働きがあきらかにできる。より高く登りいちばん高い場所から見下ろすと、人は高僧の視点を得られるのかもしれない。

どんな高度にいようと、私たちは自分だけの山――最も高く、最も奥深い臓器である脳から世界を眺めている。脳は実際のところ、それほど体の奥にあるわけではない。頭皮と頭蓋骨という隙間がほとんどない、2つのごく薄い覆いのすぐ下に位置し、私たちが世界を経験するときの謎めいた見晴台の役目をしている。

つまり、脳は自分の最も深い部分が存在する場所だと言える。しかも人体と同じく、脳全体では、脳内の各領域を合わせたよりもずっと大きな力を発揮することができるのだ。

ジョナサン・ライスマン 内科・小児科医師

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Jonathan Reisman

北極圏や南極、ネパールの高地、アメリカ先住民居留地など世界各地で医療活動をおこなう。スペイン語とロシア語に通じ、健康と教育の向上を目指すインドのNPO代表を務める。自然と現代医療のつながりについて、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、オンラインマガジン「スレート」などに多数寄稿。妻と子供たちとともにアメリカ、フィラデルフィア在住(写真:Ⓒ Olaf Starorypinski)

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