高山登山者は「脳の腫れ」に注意すべき医学的理由 命を脅かす「高地脳浮腫」を発症することも
海抜から高くなればなるほど「脳は腫れる」
ヒマラヤの高地では、頭痛はただの頭痛ではない。人体がその土地に適応していないしるしだ。高山病はどの臓器よりも脳に深刻な影響を与える。
脳の機能はもっとも先進的な神経科学の研究でも、ほとんど解明されていない。人間がその中に住んでいるというのに、脳はいまだにブラックボックスだ。この臓器の中で、どのように意識が作り出されるのかははっきりわかっていないし、どこで脳が終わり、どこで精神が始まるのか、その正確な地点についてはいまだに研究途上だ。1つわかっているのは、海抜から高くなればなるほど脳は腫れるということだ。
エベレストがビルで海抜ゼロが1階だとしたら、その頂上は2900階になる。1階からエレベーターに乗ったら、途中で耳がジンジン痛くなるのに加え、おそらく生涯最悪の二日酔いの症状になるだろう。ズキズキする頭痛、吐き気、倦怠感は、最も軽い高山病である急性高山病(AMS)の典型的な症状だ。
高度がより上がるともっと具合が悪くなり、脳の腫れが命を脅かすほどになる高地脳浮腫(HACE)を発症することもある。高山病で命を落とすのは、ほとんどがHACEのためだ。
高地で肺に水がたまることもあるが、ヒマラヤのような高い山を登るときに経験する大半の症状は、脳に影響を受けるからだ。標高が高くなると、どうして脳の生理機能にこのような不快で、死にいたりかねない変化が起きるのかはいまだに謎だ。未知のメカニズムと、気圧と酸素濃度の低い薄い空気で、脳内の血管から体液が漏れるのだ。
とりわけ脳の場合、ほかの臓器とはちがい、ちょっとした腫れも大きな問題を引き起こす。
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