本番が始まりました。
会場は女子高生の熱気でムンムンしています。そして、オープニングから二五分後、ついに「かかってきなさい!」の時間がやってきました。右にある心臓がバコバコいっています。舞台袖から思い切って飛び出していくと、なんとダウンタウンさんが僕の両脇に立ってくれました。
浜田さんが言いました。
「お名前は?」
「オッ、オオシロフミアキー、ジュウヨンサイー」
声が完全に上ずっています。
「どっから来たの?」
「アマガサキシー」
「今日なにしてくれんの?」
「ヒトリコントー」
緊張のあまり、長いセリフをしゃべることができません。
僕は仕込んできた四本のネタを、夢中でやりました。
「浣腸ー。あっ、田中や、浣腸したろ。ズボッ。あっ、間違えた、吉田やった。オッヒョッヒョ」
会場は意外にウケています。
「球打ちー。よっしゃ、ホームラン撃つぞ。おっ、球が来た。(股間を押さえて)コン! オッヒョッヒョ」
どうにかこうにか四本のネタをやり終えると、浜田さんが僕にマイクを向けてくれました。
信じられないことに優勝してしまった!
「どやった?」
「僕、将来、吉本興業に入りたいです」
そう言った瞬間、松本さんが、
「入れるかー」
と言いながら左手で僕の右目をどついたのです。
マイクが「ドン」という鈍い音を拾いました。
たぶん緊張し切っていたのだと思いますが、僕は松本さんに強烈な突っ込みを入れられて、うっすら泣きそうになってしまったのです。会場から女子高生たちの「かわいそう」コールが湧き起こりました。
そのせいかどうかわかりませんが、三組の出し物が全部終わり、浜田さんが、
「さあ、三組の中から優勝を決めましょう」
と言うと、松本さんが、
「フミアキー!」
と言ったのです。
信じられないことですが、なんと僕は『4時ですよ~だ』の「かかってきなさい!」で優勝してしまったのです!
賞品を説明するナレーションが流れている間、浜田さんが「よかったな」と言いながら肩を叩いてくれました。そして僕は優勝賞品として、セガの「マスターシステム」とゲームカセットを三本貰って、意気揚々と帰ってきたのでした。
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