「お互いに今までの人生はいろんなことがありすぎたね、これからは劇的なものは望まずに穏やかに暮らせればいいよね、という話に落ち着きました。美味しいゴハンを食べて晩酌ができればいい、という老夫婦みたいな結論です」
純二さんは自分の畑の近くに4DKの平屋を借りて住んでいる。今のところ農業の収入は少ないが、都市部ではないので家賃も安く、一人暮らしに問題はない。美香さんはその家に「身一つで転がり込む」予定で、すでに近所の食料品店での週末のアルバイトも始めている。世帯収入を補いつつ農業を手伝っていく予定だ。
細かい条件は違うのに似ている2人
「いろいろ大変だったのに前ばかり見ている彼と一緒にいると気が楽になるんです。彼からも『悲惨な話をあっけらかんと言うね。悲壮感がないのがスゲー』と言われています。確かに振り切ってしまった感じはありますね」
そして、冒頭のセリフに戻る。美香さんは結婚相談所の担当者から「細かい条件はお互いに違うけれど、こだわりの勘所が似ている」と純二さんを紹介された。ワクチン嫌いの自然栽培農家と知ってピンと来た。これは面白い、と。万人受けはまったくしなくても自分に受ければいいのだ。
「大学院卒の大企業社員など、立派な経歴の男性ともお見合いしました。憧れは感じても面白い!はなかったです」
社会人としての経験を重ねてくると、いい意味でふてぶてしくなると筆者は感じている。人生には避けられない不運や失敗はあるけれどなんとか生き延びてきた――。その自信があれば、他人や世間の基準ではなく自分なりの価値観で人生の選択をできるようになる。
美香さんと純二さんの間には他人への羨望交じりの恋愛感情や計算高さは存在しない。そこにあるのは同志の笑いに満ちた連帯である。
(取材協力:結婚相談所Repre)
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