私はこれまで、多くの企業の働き方改革で、朝イチのメールチェックをやめて、まず自分がその日に最もやりたいことを取り組むことを推奨してきました。この話をすると、ほとんどの企業で同じ反応をされます。
「それはできない。緊急の連絡がきているかもしれないから」という反応です。
そこで、本当に困るのかどうかを実験的にやってみますと、これまたほぼ同じ反応をされます。
「別に困らなかった。確かにはかどるような気がする」という反応です。
脳の自動化は、無意識で行われています。行動の選択でさえも、無意識で行われています。そして私たちは、その自動的な行動に対して理由を後付けしています。これは、チョイスブラインドネスという有名な実験で立証されています。
被検者に2人の顔写真を見せて、どちらが好みの顔かを選んでもらいます。少し別の話をした後、選んだ顔写真とは違うほうの顔写真を見せて「どこが好みなのですか?」と聞くと、被検者は、選んでいない顔写真であることに気づかず、質問に答えるのです。
目覚めた後や出勤後、帰宅後や入浴後など、場面が変わるときに最初に行うことは、ほぼ自動化されていて、その理由は後付けされています。この仕組みに逆らって、新たな行動に書き換えて自動化させましょう。
後ほど詳しくお話ししますが、スマホやパソコンでインターネットに接続すると、画面に表示される情報に脳の記憶容量が奪われるので、自分の行動を客観的に書き換えるワーキングメモリが使えなくなります。
ネットにつなぐ前に1つだけ作業をしてみましょう。作業を完遂する必要はありません。ちょっと手をつけるだけです。
作業の見通しがついたら、2番目の行動としてメールチェックをしましょう。たったこれだけで、やるべきことに対する「めんどくさい」が消える体験ができます。
両手に違う物を持たない
自分はめんどくさがりだ、という人の相談にのっていると、客観的に見ると矛盾している、不可解な行動をしていることがあります。
それは、両手に別の物を持つことです。
同時に複数の作業をしようとして、そのような状態になっているのですが、これは、「今どっちの作業をしようとしているのかわからない」と、脳を混乱させる命令です。
私たち生物の生存戦略は「省エネ」で、基本的には1つのタスクしかこなすことができません。ですから、何かを手に持っているときに、別の作業を思いついたとしても、両手に物を持たないようにしてみましょう。
なぜなら、両手に物を持つと、目にした刺激に注意が奪われて無駄なことをしてしまうからです。
ここでのポイントは、シングルタスクにする=仕事量を減らす ではない、ということです。むしろ、シングルタスクにすると、1日を終えたときの達成感は高まるはずです。
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