小型犬に多い「犬の歯周病」飼い主に伝えたい基本 年々増える手術件数、皮膚や骨に穴が開くことも

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 小型犬ならではの特徴もある。

「小型犬は顎の大きさに対して歯が大きく、歯間が狭くなっていることから、食べかすや汚れが溜まりやすい傾向があります。小型犬と同様、短頭種も歯周病になりやすい犬種です。顎の長さに対して歯の間隔が狭いため、殺菌効果を持つ唾液が歯間に行き渡りづらいのが理由です」(藤田獣医師)

歯周病は口の中を目視しない限り発見しづらい。歯周病の治療は歯垢・歯石の除去と、抜歯などの外科治療に大別されるが、後述するように重篤な症状にまで至ってしまうと、麻酔下での外科治療が必要になることもあり、犬にかかる負担も大きくなる。

歯周病の悪化で重篤な症状に

最初に整理しておくと、そもそも歯周病には「歯肉炎」と「歯周炎」がある。

歯肉だけが炎症を起こした症状を歯肉炎、歯肉のほか、歯根膜・セメント質・歯槽骨で成り立つ歯周組織にまで炎症が及んだ症状を歯周炎という。歯肉炎を放置していると歯周炎へと進行し、状態が悪化する。

歯周病になるメカニズムはシンプルだ。歯に付着した汚れを放置したことでできる歯垢(プラーク)内の細菌や他の炎症性物質などが歯周組織に入り込むことで引き起こされる。

なお、歯垢は唾液中のカルシウムやリンを取り込んで石灰化して歯石になる。人間の場合、歯垢が歯石に変化するのは20日間ほどだが、犬の場合はわずか3〜5日間で歯石に変化する。

歯石の上には歯垢が付着しやすいため、歯石ができるとその上に歯垢が溜まって、さらに歯石が厚くなり、さらにその上に歯垢が付着、症状が進んでいく。

段階としては、歯肉の赤みや腫れがひどくなり、歯と歯肉の間(歯肉溝)の深さが増して「歯肉ポケット」が形成される。さらに状態がひどくなると、歯の周囲の歯根膜や歯槽骨が破壊されて、歯肉ポケットが深くなり「歯周ポケット」と呼ばれる状態に。その歯周ポケット内の炎症が進み、そのうちに膿が溜まり、漏れ出てくるようになると「歯槽膿漏」と診断される。

さらに歯周組織の破壊が進行すると歯が抜け落ちたり、顎の骨に穴が開いて口の粘膜や皮膚まで貫通したりして重篤な状況に陥ってしまう。具体的には目の下など体の外側に穴が開く外歯瘻(がいしろう)、口腔粘膜に穴が開く内歯瘻(ないしろう)、口腔と鼻腔とを隔てる骨と組織に穴が開く口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)などが挙げられる。

「ここまで状態が悪化していると、外科手術をしてもほとんどの歯を残せないケースもあります。だからこそ、進行する前に気づくことが重要です。見分け方としては、口臭がある場合は明らかに病気のサインです。年齢を重ねた犬なら口臭があると捉えるのは誤りで、口の臭いは無臭が健康のバロメーターとなります」(藤田獣医師)

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