言い争いが絶えない職場を変える「伝えるスキル」 欠けているのは「話す技術」ではなく「聴く技術」

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同調してしまうと相手の気持ちが増幅し、愚痴大会になりがちです。相手が話しているときには、評価もせず、反論も考えず、相手の立場になりきって傾聴し、相手の立場や気持ちを理解することが重要なのです。

・聴く(想像力をフルにはたらかせて、相手の気持ちに共感する)
× 相手の会話を、自分の目線で解釈し、評価しながら聴く
△ 相手の問題は何かを、理解しようと努力しながら聴く
◯ 相手目線で世界がどう見えているのか、感情移入して聴く

「傾聴」スキルを磨く4つの問い

あの人は、なぜそんな言動をするのか。どんな世界を見て、何を考えているのか。相手の「背景」を理解したいのに、「つい対立してしまう」と、悩む人もいるでしょう。

そんなときは、議論したときのことを思い出してみましょう。あなたの「聴く姿勢」に問題はなかったでしょうか?「なぜ反論するのだろう」と、不満が顔に出ていませんでしたか?「論破してやろう」と、言葉のアラを必死に探していませんでしたか?

あなたが怖い顔をして、防御、抵抗といった姿勢や態度でいたのでは、信頼関係はつくれません。警戒心を解いて相手をわかろうとする姿勢から信頼関係が生まれ、それが、ともに手をとり、問題解決に向かう土台になるでしょう。

Question1:最近、「うまくいかなかった」と感じたコミュニケーションはありますか?
Question2:そのとき、あなたはどう感じ、どんな表情やしぐさをしましたか?
Question3:相手の視点に立つと、あなたのその表情やしぐさはどう感じられますか?
Question4:相手の立場に立って再度考えると、次に同じシチュエーションになったとき、あなたはどんな姿勢を示すとよさそうですか?
「傾聴」習得プラクティス
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「わたしメッセージ」と「傾聴」を重ねていくと、お互いの不安が解消され、相手の言葉を受け入れる心の準備ができていきます。その段階になったら、「問い」の技術を使いましょう。相手の心の中にある解決策を引き出すための、問いを投げかけるのです。

そして、どちらかの案を通すのではなく、2人が抱える問題をともに場に出し、それを解決する「第三案」を共創していきましょう。

書籍では「問う」「共創する」を実践する方法も、くわしくお伝えしています。問題は学習のチャンスであり、新たな信頼関係をつくるチャンスでもあります。「対話」によってそれを乗り越えたとき、「信頼関係」という目に見えない資本が積み重なっていくのです。

斉藤 徹 起業家、経営学者、研究者 ビジネス・ブレークスルー大学教授

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さいとう とおる / Saito Toru

日本IBMを経て、2005年にループス・コミュニケーションズを創業。ソーシャルシフト提唱者として、知識社会における組織改革を企業に提言する。2016年に学習院大学経済学部経営学科の特別客員教授に就任。2020年からはビジネス・ブレークスルー大学教授として教鞭を執る。2018年には社会人向けオンラインスクール「hintゼミ」を開講。卒業生は1000名を超え、大手企業社員から経営者、個人にいたるまで多様な受講者が在籍。企業向けの講演実績は数百社におよぶ。組織論、起業論に関する著書も多い。
株式会社hint代表。株式会社ループス・コミュニケーションズ代表。

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