北陸新幹線、その実力と残された課題とは? 開業初日に取材をしてわかったこと

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現在の観光においては、見学・見物の比重は相対的に低下し、食を含めた体験の比重が反対に上昇している。テレビ番組や出版物における「グルメ」の氾濫が、象徴的だ。「○○を食べたいから××へ旅する」という動機は珍しくなく、むしろ一般的となっている。北陸は、その受け皿として格好の土地だ。

一方の金沢においては、駅前の地下広場で開催されていた「おもてなし大茶会」が印象に残った。

文化が来訪の武器になる金沢市

無料で抹茶と和菓子が振る舞われていたもので、主催は金沢商工会議所と金沢市。あらかじめ用意していたお茶を振る舞い短い時間で手早くいただける席と、茶を点てるところから本格的に楽しめる席が分けて用意されており、この土地の細やかな気づかいを感じる、非常に好感の持てるイベントであった。

金沢駅前の地下広場で行われていた「おもてなし大茶会」は金沢らしい振る舞いであった

3月14・15日の両日、開催され、いずれも16時までの予定が予想以上の人気で抹茶などがなくなり、早くに終了したようである。

金沢は、城下町としての長い歴史から、独特な文化を持つ町と以前から高く評価している。JR金沢駅兼六園口を出て、駅前広場に面して右手すぐのところには「石川県立音楽堂」が立っている。ふつうの町なら、商業施設かホテルにでもなっている、駅前の超一等地である。そこに音楽ホールを建てるとは並大抵のことではない。

また、同じ兼六園口には、木造の巨大な「鼓門」が駅への歓迎ゲートのように立っている。伝統芸能で使われる鼓を模したもので、2005年に完成した新しいものだが、今や金沢のシンボルでもある。

これらの建物は、駅としての機能に直接関わるものではない。つまり、無くても、列車への乗降には何ら差し支えるものでもない。しかし、存在していれば心が豊かになる。それが文化というものだ。

慌ただしい日常から離れることを目的とするのが「旅」ならば、金沢のこうした文化は、来訪の目的として心に大きく作用することであろう。北陸と北陸新幹線の今後を、暖かく見守っていきたい。

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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