持ち運べる空気清浄機CMがグンと注目された訳 コロナ禍での外出欲求を刺激した「テレビCM効果」
8月に放映されたCMは、自動車内での使用に特化した「車内シーン篇」と、さまざまなシーンで使えることをアピールした「複数シーン篇」の2パターン。検索ボリュームのグラフで見てみると、どちらも非常に高いパフォーマンスをみせた。
ここで着目したいのは、テレビCMの放映が終了したあとも検索量が下がり切らず、ベースラインの水準がCM放映開始前より上がっている点。CM放映後も一定の検索量が維持されているのは、CM放映によって瞬間的な注目を集めただけでなく、中長期的なブランド認知に成功したからだと考えられる。
「CMのターゲットは狭いほど良い」は本当か
有力な要因として真っ先に思い浮かぶのが、製品を取り巻くマクロ環境──具体的には新型コロナウイルスの流行だろう。今年の夏は過去のピーク時に比べれば感染者数が少なく、自粛モードも解消されつつあったとはいえ、感染への懸念を完全に払拭できたとは言いがたい状況だった。
そんななか迎えた行楽シーズン。「外出先にもきれいな空気を」と謳った持ち運べるサイズの空気清浄機が、人々の「コロナは気になるが出かけたい」というニーズにぴったりハマり、検索行動にダイレクトにつながった可能性が高い。
次に、CMにおけるコミュニケーション戦略はどうだろうか。
放映した「車内シーン篇」と「複数シーン篇」の指名検索スコアを比較すると、「車内シーン篇」よりも「複数シーン篇」のスコアのほうが11%高いことがわかった。
2つのCMを見比べてみると、「車内シーン篇」に登場するのはクルマで出かけるカップルらしき男女。車内には「Airdog mini」が設置されている。CMのナレーションは以下の通り。
<くしゃみや咳で飛沫が広がる車内。Airdogから待望のmini登場。ペットボトルサイズなのに短時間でパワフルに洗浄します。車内をきれいな空気で満たし、安心の空間へ>
一方、「複数シーン篇」に登場するのは、出先で打ち合わせをする男性2人、カフェでお茶をする女性2人、ヨガスタジオでエクササイズする女性、コワーキングスペースでラップトップに向かう女性など、シチュエーションも年代・性別・属性も異なる人々。それぞれ傍に「Airdog mini」が置かれている。CMのナレーションは以下の通り。
<打ち合わせに、カフェタイムに、フィットネスに、赤ちゃんに、車の中でも、パーソナルスペースの飛沫感染に>
「車内シーン篇」が自動車ユーザーや、感染対策に敏感な層へ向けられたコミュニケーションであるのに対し、「複数シーン篇」はさまざまな年代・性別・属性のより広い層に向けられたコミュニケーションになっている。
マーケティングの世界では「ターゲットは狭ければ狭いほど良い」が定説のはずだが、「Airdog mini」のCMはよりターゲットの広いバージョンのスコアが伸びているのだ。