「ソ連崩壊」を1980年に予言していた本の凄い中身 小室直樹はソ連軍をどう分析していたのか

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いかにも、現在の国鉄における非能率はたいへんなものであって、国鉄の売り上げとトヨタ自工(現・トヨタ自動車)の売り上げとはほぼ同一であるが、国鉄はトヨタ自工の10倍以上の人員を擁している。

また、国鉄には赤字線が多い。この赤字線を廃止し、人員を整理することこそ、国鉄が運送業という本来の目的のために奉仕する最良の方法であり、これが日本の国家目的からすればベストなのではあるが、なかなかそうはいかない。その理由の一つは、国鉄という組織が自己目的化し、それ自身の要請に従って動くからである。そして、国鉄の要請と国家の要請とが衝突しても、いっこうに気にすることはない。

ソ連軍は国家の要請を無視して行動している

このような自己目的化した組織のなかで、最大のものが軍隊である。帝政ドイツにおいても、戦前の日本においても、自己目的化した軍隊は、国家の癌であった。国家的要請と軍隊自身の要請とが衝突する場合には、軍隊は必ず自分を国家に優先させることになる。それゆえ、国家は軍隊によって破局にみちびかれることになる。

たとえば、戦前の日本において、陸軍自身、対米戦に勝ち目のないことはよく知っていた。日本の国家目的は、どんなことがあっても対米戦を避けることであり、このことに関しては、だれ一人として異議のありようがない。責任のある人間は、一人のこらず戦争反対であったが、それは当然のことであって、後からのいいのがれだとは思えない。

ところが、陸軍の要請は、絶対に支那撤兵はしないということである。支那撤兵をしなければアメリカとの戦争は必至であるから、国家的要請と陸軍の要請とは矛盾する。いかにすべきか。論理的には、答えは疑問の余地のないほど明白であろう。国家のために陸軍があるのであって、陸軍のために国家があるのではない。陸軍の要請が国家のそれと矛盾するのであれば、陸軍はためらうことなく譲歩すべきであろう。しかし、陸軍の組織の論理はこれを拒否した。

帝政ドイツにおいても、これと同様な展開がみられた。ソ連軍は今や、ソ連最大の組織に成り上がった。軍の要求が、ソ連において占める地歩の大きさは、容易に想像できるだろう。しかも軍の要求は、それが国家の安全保障のための要求という形をとるため、だれしも容易に反対しえないのだ。

1956年のハンガリー事件、68年のプラハの春、チェコ事件を思い出していただきたい。アフガン事件もそうだ。ハンガリー事件ではナジ首相を処刑し、チェコ事件ではドプチェク第一書記を追放したが、そのやり方は全世界の非難をあびた。これらの事件で、共産主義を嫌いになった人は、日本にも、世界にも多い。

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