なぜマクドナルドの経営改革は"悠長"なのか データから見えてくる内部事情

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ここで、話が少し横道にそれますが、過去に大きな食品不祥事に直面した会社についてお話したいと思います。

雪印食品と不二家――過去に起きた食品不祥事の例

たとえば、雪印食品は、産地偽装の問題で信用が失墜し、2002年4月に解散を余儀なくされました。雪印食品の不祥事が発覚する前の2000年3月の自己資本比率は26.2%であり、それが、たったの1年で14.8%にまで低下してしまいました。

つまり、そもそも財務基盤が強固とはいえない会社で不祥事が起きたことで、自己資本比率が急激に下落し、事業の継続に支障が生じ、その結果、解散となったのです。

また、不二家では、2007年1月に使用期限切れの原材料を使用していたことが発覚しました。その直後である2007年3月末の不二家の自己資本比率は19.6%でした。

不二家も、雪印食品と同じように自己資本比率が高いとはいえず、財務基盤が強固ではありませんでした。

そのため、倒産回避のため、不二家は山崎製パンの出資を受けてその子会社になるとともに、矢継ぎ早に、ありとあらゆる努力を行いました。その結果、不二家は、その2年後の2009年3月期には黒字決算を発表するまでに回復しました。(なお、不二家の復活につきましては、拙著『決算書は「下」から読む、が正解!』(SB新書)に詳しく書かれていますので、興味のある方はご一読ください)

これに対して、マクドナルドの場合には、不祥事発覚前の2013年12月における自己資本比率は80.6%であり、不祥事によって大赤字を出したあとの自己資本比率も78.6%の高水準を維持しています。

ですから、一見、雪印食品のような解散はないだろうし、不二家のように山崎製パンに出資を仰いで会社の存続をはかるということにならずに済むかもしれません。ですが、果たしてそうなのでしょうか。

ここから先は、筆者の推測が入ることをお許しください。

そういうこともあって、筆者には、不二家の時と比べて、今回のマクドナルドの反応は、やや悠長に見えてしまいます。

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